2020年
著者:二村昌樹
所属:国立病院機構 名古屋医療センター 小児科 アレルギー科 エビデンス評価室

  • 健康科学
  • 乳児・周産期・女性の健康
  • 免疫・感染防御・アレルギー・がん

【要旨】

食物抗原の摂取開始遅延と湿疹部位からの経皮感作は食物アレルギーの危険因子である。乳児湿疹は高頻度に発症するため、離乳食開始時に湿疹が存在する可能性は高い。今回、出生コホート調査にて、湿疹の存在下で牛乳を含む調製粉乳を摂取開始することが、生後12か月時点の牛乳への感作および牛乳アレルギー発症への影響を調べた。また症例集積研究にて、出生直後からの皮膚バリア機能を評価し、その後の牛乳アレルギー発症率についても調査を開始した。出生コホート調査では1000人が登録され、753人において生後12か月での牛乳特異的IgE抗体を評価した。牛乳特異的IgE抗体陽性者は154人(20.5%)で、牛乳アレルギー症状を認めた者は17人(2.2%)だった。摂取開始時に顔面や口回りに湿疹があった場合は、牛乳特異的IgE抗体陽性となる傾向があり(オッズ比1.54、95%信頼区間0.93-2.53、P=0.092)、牛乳アレルギー症状は有意に多かった(オッズ比8.37、95%信頼区間1.91-36.63、P=0.005)。皮膚バリア機能は2021年3月までに32人の新生児が登録され、生後2~9日目と比較して生後1か月時には皮膚水分量は増加し、皮膚水分蒸散量も増加していた。湿疹の存在下では牛乳摂取は回避すべきと考えられた。新生児期の調製粉乳摂取と皮膚バリア機能の関係については今後検討していく。

2024年6月21日