「日本型酪農経営継承システム」の開発に向けた実態分析と課題
2019年
著者:高津 英俊*1 片岡 美喜*2
所属:*1公立大学法人秋田県立大学
*2公立大学法人高崎経済大学
はじめに
酪農家戸数の減少は、全国的に止まる兆しを見せていない。農林水産省によると酪農家戸数は2000年33,600戸から2019年15,000戸と半数以下まで減少している。20年間で18,600戸の酪農家の廃業は、基本法農政下で蓄積してきた有形・無形の酪農資産を継承せずに消失したことを意味する。特に都府県では北海道に比べ飼養頭数及び酪農家戸数の減少速度が速く、生産基盤の維持そのものが喫緊の課題となっている。
かかる状況に対して、経営資産を有効利用するために酪農経営を新たに開始したい者と離農予定者とのマッチングを実施し、経営継承を支援する取組みが1980年以降に北海道を中心に見られるようになった。
先行研究でも同様の状況が見られ、北海道を事例とした研究は多数見られる一方で、都府県酪農の第三者継承に焦点を当てた研究は少ない(長田他、2017;高津・鵜川、2019;山内他、2019;山崎、2012)。これらの研究では、都府県における個別事例や支援施策に関する報告など、継承時の諸課題の整理が中心となっていた1。北海道と都府県では立地面等で酪農形態が異なることから、都府県地域を事例とした研究の更なる蓄積が求められる。また、酪農における第三者継承の支援組織に焦点を当て、その支援状況の比較分析を行った研究もほとんど見られない。
そこで本研究では、酪農の第三者継承支援に取り組む都府県地域の支援組織を事例に、同組織及び支援を利用した酪農経営者への聞き取り調査から、その役割と課題を明らかにすることを目的とする。調査地域は、組織形態が異なる支援組織(協議会方式2、酪農協主導方式3)を有する4地域を選定した。