2019年
著者:徳田 克己
所属:筑波大学 医学医療系

  • 社会文化
  • 食文化・食生活

はじめに

 日本では2018年8月8日に「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の規格基準」が改正され、乳児用液体ミルク(以下、液体ミルク)の製造および販売が解禁された。それを受けて、2019年3月にグリコが「アイクレオ」を、2019年4月に明治が「らくらくミルク」を販売開始した。
 液体ミルクとは、あらかじめ調乳された液体状のミルクであり、1973年にフィンランドで製造、販売されて以降、欧米諸国、韓国などで広く使用されている(奥,2017)。液体ミルクは開封すればすぐに子どもに与えられる手軽さに加えて、誰もが同じ温度、同じ濃度のミルクを子どもに飲ませられることから、父親や祖父母などの家族が授乳できるため、母親の育児負担の軽減につながると考えられている。加えて、水や煮沸消毒を必要としないことから、災害時に活用できることが期待されている。
 水野・徳田・趙(2019)は、韓国で乳幼児を育てている母親を対象に調査を行い、韓国の母親にとって液体ミルクが育児負担の軽減に効果があるかについて検証した。その結果、韓国では日本ほど災害が発生しないために、災害時に液体ミルクを活用するという発想はないが、外出時や父親を含め他者に子どもを預ける際に液体ミルクはある程度のメリットがあり、授乳の選択肢の1つとなっていることを確認した。しかし、粉ミルクに比べて価格が高いこと、常温の液体ミルクを飲めない子どもが一定数いること、賞味期限が短いこと、6本以上のセットでしか販売されておらず、1本単位で購入することができないこと、コンビニエンスストアでは扱われていないことなどの課題があることがわかった。
 そこで、日本においては液体ミルクがどのように販売されているのか、乳児を育てている母親は液体ミルクをどのように認識しているか、実際に子どもに与えているか、乳児は液体ミルクを飲めるのかなどの調査を行い、日本において液体ミルクが母親の育児負担の軽減にどの程度の効果があるかについて明らかにしたいと考えた。
 なお、本研究は筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:1244-1)。

※2019年度「乳の社会文化」学術研究

2021年3月8日