2013年
著者:成田美紀
所属:東京都健康長寿医療センター研究所

  • 健康科学
  • その他

要旨

牛乳の習慣的摂取が認知機能低下に対する影響を明らかにすることを目的として、地域高齢者を対象とした研究を行い、牛乳の習慣的摂取が血中の栄養関連バイオマーカーに及ぼす影響を検討した上で、認知機能低下との関連を調べた。2003年および2013年に実施した介護予防健診に参加した70歳以上の住民411名および405名に対して、習慣的な摂取栄養素量と食品摂取量を調査し、牛乳摂取の動向および栄養学的特徴を調べた結果、2003年からの10年で牛乳摂取量は有意に増加し、中でも低脂肪乳の摂取量が増加していた。年齢階級が高くなることで、牛乳摂取量に違いは見られなかった。牛乳飲用の割合が高くなるにつれて、1日あたりのエネルギー摂取量は高くならず、たんぱく質および脂質のエネルギー比率が高く、カルシウムをはじめ、カリウム、リン、ビタミンB群など微量栄養素に富んだ、質の高い食事を摂取していることが確認された。将来の栄養状態の低下に牛乳摂取は寄与してはいなかったが、横断的関連では、牛乳飲用の割合が高い者は、血中脂質指標としてのHDLコレステロール、貧血指標としてのヘモグロビンおよびヘマトクリットがいずれも有意に高かった。2003年調査時にMMSE 得点が25点以上の参加者を最大5年間追跡した222名に対して、MMSE得点が3点以上低下した場合を認知機能低下と定義し、交絡要因を調整して牛乳摂取との関連を調べた結果、牛乳摂取の割合が低いほど認知機能低下が起こりやすく、その傾向は女性より男性に強いことがわかった。高齢期には、低栄養対策として牛乳をはじめとした食品をバランスよく摂取することが将来の認知機能低下を抑制し、認知症を予防するためにも重要と考えられる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000jgmy.html

2015年9月18日