2013年
著者:長尾慶和
所属:宇都宮大学農学部(付属農場)

  • 健康科学
  • 分析・その他基礎研究

要旨

現在における食生活の多様化および強い美容意識が結果的に体内におけるビタミンD(VD)不足をもたらしている。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは、VDと免疫あるいは慢性病との関連性の報告を受け、VDの摂取目安量を以前の2~3倍に引き上げた。元々、魚介類を頻繁に食べない欧米人は、牛乳にVDを添加およびサプリメント摂取でその不足を防いできた。しかし日本では、VDの血中濃度の目標値は従来のままであり、また食品中への添加剤を好まない食文化により、牛乳中へのVD添加も行われていない。
そこで、我々は放牧、すなわち日光浴と生草摂取によるVD強化牛乳について着目した。宇都宮大学農学部附属農場で飼養されている成牛ホルスタイン種泌乳中6頭を用い、実験区と対照区がそれぞれ3頭になるように振り分けた。2013年5~6月中に実験区を5時間放牧場に放牧し生草摂取および日光浴をさせ、対照区を生草摂取なしおよび日光浴または舎内繋留にした。晴天日の夕方搾乳において生乳をサンプリングした。
その結果、乳量および乳中IgM 濃度において放牧区が対照区と比較して有意に高く、乳中25-ヒドロキシVD(25-OHD3)濃度、乳中IgA 濃度および乳中IgG 濃度において放牧区が対照区と比較して高い傾向にあった。しかしながら、乳中25-OHD3 濃度と他の項目の間に相関性は見られなかった。
これらのことから、放牧(日光浴)は乳中に自然なVD 濃度および免疫グロブリン濃度を増加させ、ウシおよびこの乳を飲んだヒトにおける健康促進に寄与できる可能性があることが示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000jgmy.html

2015年9月18日