2013年
著者:酒井一樹
所属:尚絅大学生活科学部栄養科学科

  • 健康科学
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ
  • 消化吸収・栄養代謝・乳糖不耐

要旨

思春期前後の小児を対象にビタミンD・カルシウム強化牛乳(強化牛乳) を負荷する介入手法により、強化牛乳が小児の骨密度増強に及ぼす効果を検討した。また介入中の尿中カルシウム(Ca)排泄量を調査し、強化牛乳負荷の安全性について検討した。
熊本市の慈恵病院で募集した女子13名、男子4名の計17名を対象とし、全ての対象者に強化牛乳の介入を行った。介入期間は女子で5.2±1.4か月、男子で5.4±1.2か月であった。Dual-energy X-ray absorptiometry(DXA)法を用いて介入前後で第2-4 腰椎の骨密度(BMDL2-4 を測定し、SDスコア (BMDL2-4SDスコア) を算出して差を比較した。介入前には対象者の栄養摂取量、運動歴、思春期発達度を調査し、血液、随時尿を採取した。また介入中は定期的に随時尿を採取した。血中25-hydroxy vitamin D (25OHD), intact PTH, Ca,アルブミン(Alb),無機リン(Pi)を測定し、介入前のビタミンD、Ca状態を確認した。また尿中Ca排泄量の変化を確認するため尿中Ca, ナトリウム(Na),クレアチニン(Cre)を測定し、介入前と介入中でカルシウム/クレアチニン比(Ca/Cre)を比較した。
主な結果は以下の通りであった。
①女子では介入前から介入後にかけてBMDL2-4SD スコアの上昇傾向が認められた。
②女子では介入中にCa/Creの上昇傾向が認められた。介入中Ca/Cre 0.22以上の高値が女
子で48 回測定中4 回に認められたが、高値が連続することはなく一過的であった。
③男女とも尿中Ca 排泄とNa 排泄の間には有意な正の相関が認められた。
④Na 摂取量と介入前BMDL2-4SD スコアの間には有意な負の相関が認められた。
以上の結果から思春期前後の小児に対する強化牛乳の負荷は骨密度の増強に有効であり、尿路結石を配慮した安全性は高いと考えられる。ただし、継続的に強化牛乳を摂取する場合は定期的に尿中Ca/Creを確認し、Na摂取を控える等の指導を行うことが望ましい。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000jgmy.html

2015年9月18日