近い将来において、高齢者人口の増大とともに骨粗しょう症患者が増大すると推測されている。運動は骨塩量を増大させる有効な手段と考えられているが、マラソンランナーや長距離選手に疲労骨折を併発することが多いことから、運動すればかならず骨塩量が増加するとは限らないと考えられる。いろいろな種目のスポーツ選手を比較した研究から、骨塩量を増加させるには、陸上競技の長距離走のようなエアロビック型よりも、ウエイトリフティングや陸上競技の投てき種目のような、レジスタンス型の運動の方が有効であることが示されている。レジスタンス型の運動が、骨塩量を増大させるメカニズムについては、骨形成が促進することが骨代謝マーカーの血中オステオカルシン濃度の上昇から示唆されているが、骨吸収にたいする運動の影響については十分に明らかにされてはいない。その理由の一つとして、骨吸収を的確に反映するマーカーが確立されていなかったことが指摘される。従来、骨吸収の指標として尿中ハイドロキシプロリン排泄量が用いられてきたが、ハイドロキシプロリンは骨に特異に存在するI型コラーゲンだけでなく、皮膚、血管壁、軟骨などに存在するあらゆる型のコラーゲンにも含まれるので、骨特異性が低い。さらに、コラーゲンの分解で生じたハイドロキシプロリンのかなりの部分は肝で代謝分解されること、また食物由来のハイドロキシプロリンも尿中ハイドロキシプロリン排池量に影響するなどの理由から、骨吸収の指標として尿中ハイドロキシプロリンを用いるのには問題があった。
最近、骨吸収をより正確に反映するマーカーとして尿中のデオキシピリジノリンが有用だと報告された。デオキシピリジノリンはコラーゲン分子内の架橋物質であり、骨コラーゲンに局在するので、骨特異性が高い骨吸収の指標であるとして注目をあつめつつある。また骨吸収に際しては、体内で代謝されずに全て尿中に排泄されるので、全身の骨吸収を定量的に推定できる指標でもある。
そこで本研究では、レジスタンス運動が骨吸収に及ぼす影響を調べるために、まず陸上競技種目の長距離選手(エアロビック型)、投てき選手(レジスタンス型)及び一般学生の骨吸収を、尿中デオキシピリジノリン排泄に指標を用いて比較した。

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https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021tvd.html