2018年
著者:亀井 康富
所属:近京都府立大学大学院 生命環境科学研究科

  • 健康科学
  • その他

【序章】

 骨格筋は運動・糖取込み・エネルギー代謝に重要であるため、適度な運動・適切な食事によって骨格筋機能を保持することは健康増進に重要である。しかしながら、サルコペニアと呼ばれる加齢や不活動・低栄養・疾患などによる筋萎縮・筋機能低下(図1)が超高齢社会を迎えた我が国で問題となっている。加齢に伴いサルコペニアの有病率は増加しており、発症すると寝たきりや車いす生活を余儀なくされるなど、生活の質の低下、医療・介護費の増大が生じてしまう。
 近年サルコペニアとビタミンDの関係が示唆されている。ビタミンDは脂溶性ビタミン(図2)であり、核内受容体であるビタミンD受容体を介して遺伝子発現を調節するが、核内受容体を介さない作用も報告されている。体内では骨ホメオスタシスを制御していることがよく知られているほか、骨格筋を含む多くの組織で重要な役割を担っている。ヒト体内のビタミンDの充足・不足の基準は設けられているが、サルコペニアを発症するような高齢者ではビタミンDが不足・欠乏している場合が多い(図3)。また、血中ビタミンD濃度と高齢者の活動量や転倒リスク、筋力・筋量との関係が示唆されている。さらに高齢者にビタミンDを投与すると筋サイズが増大することも報告されている。しかし、その分子機序についてはよくわかっていない。
 我々は筋萎縮を引き起こす重要な因子である転写因子FOXO1に着目して研究を行ってきた(図4)。その過程でビタミンDがFOXO1を抑制するデータが得られた。すなわちビタミンDによる筋萎縮の抑制が示唆され、その分子機序解明につながる知見が得られた。本稿ではこれらのビタミンDによるFOXO1の抑制を介した筋萎縮抑制効果の研究結果について報告する。


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この研究をもとに、「あたらしいミルクの研究リポート」を作成しました。
研究リポート紹介ページ (Jミルクのサイトへ)

2020年6月24日