2020年
著者:今中 美栄(研究代表者)
所属:島根県立大学看護栄養学部健康栄養学科
共同研究者:金美玉,武内治郎,福田詩織,多々納浩,桑島千栄,坂本裕子,宮川照代

  • 食育・教育
  • 成人

研究成果の概要

●背景と目的
「健康情報を活用し健康を決める力」として定義されるヘルスリテラシーは、健康教育分野で注目を集めている。しかし日本は、欧州やアジア諸国よりも低いことが報告されており、積極的なヘルスリテラシー教育の導入が望まれている。また、健康寿命の延伸をめざす我が国にとって、骨形成に影響するカルシウムの摂取不足が重要な栄養課題となっている。近年、日本と韓国では、主なカルシウム供給源である牛乳・乳製品の摂取量が減少している。本研究では、牛乳・乳製品の摂取頻度と健康情報に関するヘルスリテラシー等との関係について要因分析を行い、必要とされる食育について検討することを目的とする。

方法:日本と韓国の国際共同研究として実施された横断研究である。調査期間は2019年4月から2020年3月、研究対象者は日本の京都府、滋賀県、島根県および韓国の大邱広域市在住の18歳以上の成人期の男女とした。調査方法は、健康情報に関する自記式質問紙によるヘルスリテラシー調査(m-HLS-14)と簡易型自記式食事歴法質問票:Brief-type Self-administered Diet History Questionnaire(BDHQ)を用いた。解析はJMP14を使用して、Spearmanの順位相関係数およびt-検定を用いた。

結果:解析対象者は、日本464人、韓国76人、合計514名、回収率は64.4%であった。「毎日牛乳を飲む」の回答中央値は「4.あまりそう思わない」、BDHQの「普通乳」では、「6.週1回以下」であり、顕著なカルシウム摂取不足が懸念される結果であった。また、日韓ともに、牛乳・乳製品摂取頻度は年齢と負の相関(r= -0.20,p<.0001, r=- 0.30, P=0.07)、日韓男女ともに「牛乳が好き」と正の相関(r= -0.54,p<.0001, r=- 0.56, p<.0001, r=0.50, p=0.002, r= 0.61, p<.0001,P=0.07)がみられた。また、日本女性は「牛乳・乳製品の価値観」と、ヘルスリテラシーでは、日韓ともに、男性よりも女性で「機能的ヘルスリテラシー」の高い結果であった。

結論:成人期の牛乳・乳製品摂取状況は極めて低く、特に自立生活をむかえる青年期のカルシウム摂取不足が懸念された。生涯を通した食育において青年期の充実を図る必要性が伺えた。また、男性には、興味の持てる健康情報を提供し、情報に対して受動的である女性には、自主的な情報収集力や批判的思考力・判断力などのヘルスリテラシーを身につける教育の必要性が伺えた。

研究分野:予防医療学,栄養教育学,行動学
キーワード:
牛乳・乳製品摂取頻度ヘルスリテラシー教育成人期日韓の現状

2024年2月29日