2020年
著者:大貫 麻美
所属:白百合女子大学 人間総合学部 初等教育学科

  • 食育・教育
  • 乳幼児

研究成果の概要

本研究は、「乳に関する科学的体験とその体験に結びつく絵本の読み聞かせを行う教育プログラムは、乳に関する豊かな気づきと科学的思考の萌芽を幼児にもたらす。」という仮説に基づき、幼児を対象とした乳に関する理科読プログラムの立案と実践、検証を目的として行った。
このプログラムの立案に際しては、国際的に広く科学教育で用いられるThe BSCS 5E Instructional Modelを援用した。まず、図書館司書である土井が中心となり、乳に関する気づきを育みうる絵本リストを作成するとともに、各学習段階でどのように絵本を用いることが適切かを協議した。そして、代表研究者の大貫を中心として、 3つの理科読プログラムの立案や活動時の評価指標の作成を行った。プログラム立案時には、対面実施を想定していたが、COVID-19感染症の流行拡大に伴い対面実施調査は縮小・中止せざるを得なかった。そのため、施設にいる保育者と遠隔地の外部講師がオンラインで協働する外部講師・保育者オンライン協働型プログラムに改変し、島根県内2施設にて実施した(東京都内2施設は対面実践実施)。
実践においては、哺乳類の共通点である乳の重要性に着目する活動(理科読プログラム「乳ってなんだ?」)、栄養の観点から乳や自らの食について考える活動(理科読プログラム「乳には栄養がいっぱい」)、乳や乳の加工製品の流通過程や、文化的側面を知る活動(理科読プログラム「乳が我が家に届くまで」)のいずれにおいても、共通性と多様性に気づくなど、科学的思考の萌芽といえる活動成果が得られた。実践を行った施設への事後調査からは、牛乳を好きではなかった幼児がコップになみなみと牛乳を入れて飲むようになった、家庭で冷蔵庫内の牛乳や乳製品の備蓄量を気にして家族に購入を促すようになったなどの行動変容が見られたことがわかった。また、保育者自身に乳に関する知識や食育の指導法等についての学びがあったことや、施設における他の教育・保育活動や、家庭での生活にも実践の波及効果があったことから、本実践が幼児の乳に関する豊かな気づきを育む環境構成にも資することが示唆された。
研究分野
幼児教育,科学教育

※2020年度「食と教育」学術研究
キーワード:
理科読 乳 幼児 科学的思考の萌芽哺乳類栄養流通 文化

2024年2月29日