偏食傾向の強い自閉症児に対する牛乳・乳製品摂取の段階的食指導
2016年
著者:水野 智美
所属:筑波大学医学医療系
研究成果の概要
自閉症スペクトラムのある子ども(以下、自閉症児)に強い偏食傾向が見られることが多い。牛乳が嫌いでなかなか飲めない自閉症児がいる。牛乳は、幼稚園、保育所、学校、施設等の給食やおやつの際に毎日、登場することが多く、牛乳を使用した料理やデザートもある。牛乳嫌いを克服することによって、毎日の給食の憂鬱感を減らすだけでなく、食のレパートリーを広げることができる。
そこで本研究は、自閉症児の牛乳嫌いの改善につながる研修プログラムを開発することを最終目標として、以下の研究を行った。
研究1 幼児を持つ保護者に対する質問紙調査
研究2 幼稚園、保育所で勤務する保育者に対する質問紙調査
研究3 幼稚園、保育所に勤務する保育者に対するヒアリング調査
研究4 牛乳嫌いの子どもに対する指導とその効果
研究5 牛乳嫌い改善のための研修プログラムの開発と研修会の実施
研究1、2 では、牛乳嫌いの子どもの中に、牛乳嫌いの背景として自閉症スペクトラムの傾向が関係するケースがどの程度あるのかを確認するとともに、保護者や保育者が牛乳嫌いの子どもにどのように対応しているのか、その効果はどの程度であるかを明らかにした。その結果、牛乳嫌いの子どもには、こだわりや感覚過敏といった自閉症児にみられる特徴のある子どもが相当数いることが確認でき、その子どもたちに「牛乳は身体によいことを伝える」「おいしそうに飲む様子を見せる」対応では、何ら効果が見られないことが確認できた。
研究3、4 では、牛乳嫌いの自閉症児が幼稚園、保育所で生活する様子、給食を食べる場面を実際に観察したり、保育者にヒアリング調査をすることによって、自閉症児の牛乳嫌いにつながる背景の要因を明らかにした。その結果、温度、におい、音などに対する感覚過敏があるために飲めないケース、色や銘柄、パッケージへのこだわりから飲めないケース、過去に無理やり飲まされて失敗をしたなどの、嫌な経験をしたことから飲めないケースなど、自閉症スペクトラムの特性が背景にあることが確認できた。それぞれの背景をもとに、牛乳嫌いを克服するための対応を検討し、2 か月実施した結果、すべてのケースでスプーン1 杯程度は飲めるようになった。
これらの結果をもとに研究5 では、牛乳嫌いを克服するための研修プログラムを作成し、実際に保育者を集めて研修会を行った。
研究分野
偏食改善
※平成28年度「食と教育」学術研究
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- 自閉症児偏食牛乳嫌い改善食指導