2015年
著者:小西 瑞穂
所属:国立成育医療研究センター 研究員

  • 食育・教育
  • 乳幼児

概要

 牛乳・乳製品は乳幼児の食物アレルギーのアレルゲンの第2 位に位置しており、牛乳アレルギーは難治例が多い。本研究では牛乳アレルギーの子どもを持つ母親へのストレス介入プログラムとして、科学的根拠に基づく心理社会的援助プログラム(Evidence-based practice; EBP)である家族心理教育を平成26 年度食と教育学術研究の助成を受けて行った。その結果、牛乳アレルギーという同じ症状・疾患を持つ子どもの母親が集まり、悩みを共有し、牛乳アレルギーに関する知識を深めたことで、生活への精神的な負担感が減少し、母親の精神的健康が改善したり、牛乳負荷に前向きに取り組めるようになった。除去食の工夫やメニューの提示により、すぐに実際の生活の中で役立つスキルを身につけることができ、除去食を作ることへの負担感が喜びに変わることも認められた。さらに、子どもとの接し方の工夫を知ることができ、日々の子育てを振り返る機会にもなった。終了後の母親の満足度は非常に高く、本プログラムは牛乳アレルギーを持つ子どもの母親のストレスを低減させるプログラムであったと考えられる。また、プログラムによって母親に精神的な余裕が生まれたことで、フォローアップ時には日常の子どもの態度や行動に対してイライラしたり面倒に思うことが少なくなり、プログラムの長期的効果も確認された。
 つまり、平成26 年度には就学前の3-5 歳のMA 児の保護者を対象に心理教育を実施した結果、保護者がMA に対する正しい知識を身につけ、悩みを共有することで、保護者の心的負担感を軽減できることが見出された。その一方で、就学以降には保護者の管理下を離れ、子ども自身で行動することが増えることによる不安が高まることが分かった。また、子どもは他の子どもと同じものが食べられないことへのストレスが強まることも明らかになった。
 平成27-28 年度には子ども自身がFA への病識を深め、自ら危険を予測・回避する力を備えることを目的に、保護者用・子ども用のMA への理解を促進するための冊子を作製・配布をし、より多くの人に有効な支援が行き届く工夫を行った。
研究分野
健康心理学、臨床心理学、家族心理教育

※平成26年度「食と教育」学術研究
キーワード:
牛乳アレルギー子ども母親生活管理

2017年12月11日