2015年
著者:廣田 直子
所属:松本大学大学院 健康科学研究科

  • 食育・教育
  • 成人

研究成果の概要

 長野県は、「平成 22 年都道府県別生命表」で、男女ともに平均寿命の年数が全国1 位であった。食生活改善推進員(以下、食改とする)による地域ネットワークを活かした活発な活動もその要因の一つと考えられている。健康指標に関連して、長野県民の野菜の平均摂取量が男女とも全国1 位である点も大きな特徴であるが、長野県県民健康・栄養調査結果では、若年者の野菜摂取には課題があることがわかっている。健康に結びついていたと考えられる食をめぐる営みが若い世代に受け継がれていない、つまり家庭内における縦のネットワークの弱体化があると考えられる。
 本研究は、家庭の枠を外した異世代間地域ネットワークづくりをめざして、異世代交流を取り入れた食生活講座の介入効果について検証しようとするものである。さらに、食生活講座の題材として牛乳・乳製品を取り上げ、適塩を目指した食事の組み合わせとして注目されている「乳和食」などを紹介し、近年問題となっている高齢者の低栄養、骨粗鬆症等の予防につながる食生活について考えるきっかけづくりになる活動を推進することも目的の一つとしている。本研究では主として、食生活講座に参加することで、牛乳・乳製品に対するイメージや利用意欲等が変化するのかを検討する。
 研究方法として、長野県M市の食改10 名(女性:58 - 78 歳)とM 高校の男子生徒3 名、女子生徒23 名の計26 名(17 - 18 歳)を介入群、O 市の食改10 名(女性:60 - 87 歳)とO 高校の男子生徒3 名、女子生徒36 名の計39 名(16 - 17 歳)を準介入群(3 回シリーズのうち1 回のみ実施)として、2015 年の6 月 - 11 月に食生活講座を実施した。ほかに活動に参加しない対照群も設定した。「牛乳・乳製品のイメージ」については「牛乳・乳製品は健康に良い」、「料理の時に牛乳は利用しやすい」、「牛乳が好き」、「牛乳・乳製品はカルシウム源として優れている」など7 項目についてSD 法を用いて1 - 7 点のいずれかを選んでもらった。その得点の事前と事後の変化をWilcoxon の符号付き順位和検定法を用いて分析した。
 その結果、「牛乳・乳製品のイメージ」に関する前後比較において、食改介入群と対照群、高校対照群では有意な差はみられなかったが、高校生の介入群、準介入群の2 群では食生活講座という介入前後で有意な変化がみられた。「牛乳・乳製品の料理のイメージ」の1 位は、食改介入群と対照群、高校生の介入群、準介入群、対照群の5 群とも、最も高い割合を占めたのは事前も事後も洋食であった。高校介入群は、食生活講座で牛乳・乳製品に関する説明を受け、食改とともに乳和食の調理実習を行って、飲用以外の利用法について考える機会を持ったため、優れたカルシウム源としてのイメージが高まったと考えられる。一方、食改はもともと牛乳・乳製品を活用した料理の学習を進めていたことから、今回の介入によって大きな変化が生じるということはなかったと推察される。牛乳・乳製品の料理として乳和食をアピールし活用してもらうには、複数回の働きかけが必要であることが示唆された。
 今回の講座で、食改と高校生がともに活動することで異世代の特性についての理解を深め、高校生では牛乳・乳製品の栄養的な特徴に関するイメージが変化し、ライフステージに応じた牛乳・乳製品の利用につながるきかっけをつくることができたと考える。今後、異世代間地域ネットワークづくりのための活動プログラムのブラッシュアップを図っていく予定である。

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キーワード:
高校生食生活改善推進員異世代間ネットワークづくり牛乳・乳製品

2017年3月9日