2014年
著者:柴 英里
所属:高知大学教育研究部人文科学系教育学部門

  • 食育・教育
  • 成人

研究成果の概要

本研究では、「牛乳・乳製品の摂取向上」という側面から理論的・実践的に食育推進に資するという視座の下、大学生を対象として行動変容ステージモデルを基盤とした牛乳・乳製品に関する食行動変容を促すための介入を実践・評価した。研究は2 部から構成されており、大学生における牛乳・乳製品摂取状況等の実態調査(研究1)と、牛乳・乳製品摂取向上のための介入の実施・評価(研究2)を行った。
本研究において対象としたのは一般大学生であったが、牛乳・乳製品摂取状況により、不定愁訴や幸福度、ストレス度に違いがあり、牛乳・乳製品の摂取が習慣化している者は、そうでない者よりも不定愁訴やストレス度が低く、幸福度が高いことが明らかとなった。これらの結果は、牛乳・乳製品に含まれる栄養素・機能性非栄養素のもつ一次機能及び三次機能と一致する傾向であった。特段の疾病を有さない青年期の若者においても、牛乳・乳製品摂取をはじめとする食生活が心身のコンディションに影響を与えるというこれらの知見は、全てのライフステージにおいて、牛乳・乳製品摂取が重要であることを支持するエビデンスとなる。換言すれば、牛乳・乳製品摂取を促す食育の重要性・意義が、人間の食行動の側面から明らかになった。
対象者の牛乳・乳製品摂取促進及び食生活改善のために、デジタル・ツールとシリコン製スチームケースを使用した自己調整学習による介入を実施した。その結果、介入後、間食としてヨーグルト摂取をするつもりのない者がヨーグルトを摂取するようになったり、ヨーグルト摂取を習慣にする者が増えたり、健康的な食生活を習慣化しようとする者が増加した。食生活改善において、デジタル・ツールとシリコン製スチームケースを使用することに対し、対象者の6~7 割は肯定的な見解を示した一方で、ツール自身の使いにくさが行動変容の障壁となった可能性が示唆された。対象者の食行動変容を促すための食教育プログラムを考える上で、イベント的な取り組みでは、効果が限定的なものとなってしまう可能性がある。例えば、間食をヨーグルトにするといった少し工夫で改善できるような行動変容目標は比較的達成されやすいが、食生活改善や、自炊の習慣化といった行動変容を促すには、自己調整学習だけでなく、適切な支援を行わなければならない。
 
研究分野
ライフステージ(特に、乳幼児、青年期、高齢期など)に対応した「乳」を取り込んだ食に関わる教育のプログラムの開発と評価
 
※平成26年度「食と教育」学術研究

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キーワード:
牛乳・乳製品摂取変容ステージ不定愁訴デジタル・ツール

2016年4月15日