2021年度「牛乳乳製品健康科学」学術研究に採択された岐阜大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野 山川路代先生の研究成果が、Nutritionに原著論文として受理され、公開されましたのでご紹介いたします。


Nutrition 2023; 115: 1121145
[PMID: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37517304/
 DOI: https://doi.org/10.1016/j.nut.2023.112145


【論文タイトル】Milk and dairy product intakes, intestinal bacteria, and respiratory infections in children of elementary school age and older in Japan.

【論文要旨】
本研究は我が国の小学生以上の児童・生徒を対象に、牛乳および乳製品の摂取と腸内細菌および呼吸器感染との関連を調べることを目的とした。
小学校2年生、5年生、中学校2年生 (n=1020) を対象に、2013年から2015年まで年一回の横断調査を実施した。食物摂取頻度調査票 (FFQ) が未提出あるいは未記入の者、呼吸器感染症や腸内細菌に関するデータに欠損があった者を除く922人を解析対象とした。牛乳・乳製品とその他食品の摂取量はFFQを用いて評価した。呼吸器感染症は、保護者の報告に基づき、過去1年間に4回以上発症した風邪またはインフルエンザと定義した。対象者が採便キットで採取した糞便から、リアルタイムPCRを用いて腸内細菌を分析した。統計解析はロジスティック回帰モデルを用いて、オッズ比 (OR) と95%信頼区間 (CI) を推定した。

潜在的交絡因子を調整した後、年4回以上の呼吸器感染症のオッズは牛乳摂取量が多いほど低下し、第1三分位群と比較した第2三分位群および第3三分位群のOR (95%CI) はそれぞれ0.91 (0.58-1.42) と0.48 (0.29-0.77) だった (傾向性P値=0.001)。乳酸菌飲料摂取と呼吸器感染症との関連性については、腸内のF. prausnitzii菌数が少ない者でのみ、乳酸菌飲料摂取による呼吸器感染症の有意なOR減少傾向が認められた。

小学生以上の児童・生徒において、牛乳の摂取量の増加が呼吸器感染リスクの減少と関連していることが明らかとなった。腸内のF. prausnitzii菌数が少ない児では、乳酸菌飲料の摂取量の増加が呼吸器感染リスクの減少と関連している可能性がある。

※本研究は2021年度「牛乳乳製品健康科学」学術研究によりおこなわれたものとなります。

▼研究報告書

2023年12月8日