小児期の牛乳乳製品の摂取,腸内環境および呼吸器感染との関連性の検討
2021年
著者:山川路代
所属:岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野
【要旨】
背景:牛乳乳製品は免疫機能に有益な栄養素を含んでおり,その摂取は呼吸器感染症のリスクを低減する可能性がある。
目的:日本の小学生以上の児童・生徒を対象に,過去1年間の牛乳乳製品の摂取と腸内細菌,呼吸器感染症との関連を検討することを目的とした。
方法:牛乳・乳製品を含む食事摂取量は,自記式食品摂取頻度調査票を用いて評価した。呼吸器感染症は,保護者の報告に基づき,過去1年間に4回以上発症した風邪(鼻水,鼻づまり,のどの痛み,咳などの症状),またはインフルエンザと定義した。菌種はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いて同定し,菌数は大腸菌の内部コントロールDNAから推定した。ロジスティック回帰モデルを用いて,牛乳・乳製品摂取,腸内細菌と4 回以上の呼吸器感染症との関連に対するオッズ比 (OR) および95%信頼区間 (CI) を推定した。
結果:4回以上の呼吸器感染症のオッズは,潜在的交絡因子を調整した後,牛乳摂取量が多いほど低下し,第1三分位群と比較した第2三分位群および第3三分位群のOR (95% CI) はそれぞれ0.89 (0.56-1.40) と0.46 (0.28-0.75) だった(傾向性P値=0.001)。測定した4種の腸内細菌については,4回以上の呼吸器感染症との間に有意な関連は見られなかった。乳酸菌飲料摂取と4回以上の呼吸器感染症との関連性は,腸内F. prausnitziiによって効果修飾され,乳酸菌飲料摂取に対するORの減少傾向は,菌数が少ない群に属する者のみで有意であった。
結論:小学生以上の年齢の子どもにおいて,牛乳摂取と4回以上の呼吸器感染症との間の予防的な関連が明らかとなった。