2002年
著者:和田安郎(監修)
所属:仙台市青葉区保健福祉センター次長(宮城学院女子大学食品栄養学科非常勤講師)
雑誌名・年・巻号頁:きんとうん出版、2002年、全119頁

  • 社会文化
  • 歴史

<要約>

 <要約>
 本書は、牛乳ビンのキャップコレクターである著者が集めた約500種類のキャップを、全ページオールカラーで紹介した本である。牛乳ビンにはキャップがつきもので、本書冒頭にはキャップコレクターはもちろん「メンコや切手、シール、ちょっとかじってみたことはあったけど。そんな人たちにも贈りたい」と書かれている。雪印牛乳のキャップ・明治牛乳のキャップ・森永牛乳のキャップをまとめて表示したあと、日本全国の牛乳販売店のキャップを地域ごとに掲載する構成となっている。
 キャップコレクションを載せると同時に、牛乳キャップへの記載事項が時代と共に変化したことを本書は指摘する。戦前から昭和43(1968)年までは牛乳そのものの日持ちが短かったために製造日表記ではなく、曜日表記だった。乳等省令が改正された昭和43年からは製造日表記が義務付けられ、平成7(1995)年には製造日表記ではなく「品質保持期限」(冷蔵さえしておけば、急速に品質が劣化する心配はない)、もしくは「消費期限」(期限内に消費しないと衛生上の問題が発生しうる)の表示へ変化したという(本書17~18ページ)。さらに、昭和20年代まではキャップの表示文字が全て左から右となったほか、呼称も「全乳」から「市乳」へ、昭和30年代には「市乳」から「牛乳」へ、ホモジナイズ技術(圧力をかけることで牛乳に含まれる脂肪の粒を小さく砕き成分を均質化する)を多くのメーカーが導入すると、牛乳には「生乳100%」と記載することとされた。
 牛乳キャップのほとんどは、一定の年齢以上の人が給食で覚えているように白地に所定の記載事項が記してあるものだが、全国で用いられていたものの中には絵が刷り込まれているもの、カラフルなキャップもあるという。なかでもフルーツ・ヨーグルトは、カラフルなインクや多色刷りのものが多く(11ページ)、多くみられる絵のモチーフは子どもだという。また、ビンを開けやすいよう小さい取っ手(つまみ)がついているキャップもあるが、これは使用の可否が都道府県ごとに決まっているので、取っ手つきのキャップがまったくない県もあるという。
 コレクションの合間には、児童文学作家ひこ・田中、リリー・フランキー、料理家高山なおみによる3つのエッセイが挿入されており、トモエ乳業博物館をはじめとする各種博物館の紹介、木下博嗣氏によるミルクキャップ占いもあるなど、牛乳キャップコレクションの楽しさと奥深さが明らかになる。
 

<コメント>

とてもきれいなカラーの画像で、採録された3人のエッセイも面白く眺めていてあきない本。またコレクションされたキャップの中には今は無い牛乳販売店のものもあり、牛乳流通や牛乳販売店の経営史研究のきっかけになる。本書45ページには、松本友里氏がふれた(「牛乳瓶の始まりを探して」『民具マンスリー』46巻4号、2013年7月。「明治時代の牛乳販売における硝子瓶使用の広がり」『民具マンスリー』47巻7号、2014年)明治・大正時代の牛乳ビンがカラーで載せられている。また、もう少し専門的に知りたい方にはたとえば青島靖次「牛乳瓶のキャップ表示に関する史的変遷」『酪農乳業史研究』4号、2010年9月、p40-43も参考になる。
(要約はhttp://m-alliance.j-milk.jp/senkou/shakaibunka/39_senko_shakai_2.html)(尾崎 智子)

2016年6月28日