2013年
著者:Hollywood, L., Armstrong, G., Farley, H.
所属:School of Biological Sciences, Queen’s University Belfast, Belfast,UK Wells, L., Belfast,UK Department of Accounting, University of Ulster, Newtownabbey, UK Department of Management, University of Ulster, Newtownabbey, UK
雑誌名・年・巻号頁:British Food Journal, 2013. 115 (6), 899-912.

  • 社会文化
  • マーケティング

<要約>

本論の目的は、乳製品産業において液体牛乳の商業的価値を上げる戦術作りのためにパッケージデザインに対する調査を実施することである。
北アイルランドにおいて農業・酪農産業は、将来の経済成長を遂げるための重要な分野として位置付けられる。農業・酪農産業は、2006年における全体的な製造業における販売量の18.2%を占める。しかし、その農業・酪農産業における総売上は、2005年の2.510百万£から、2006年には2.464百万£となっており微減している。また、この下落の内訳をみると酪農業が2番目に負の貢献をしており、-7.9万£となっている。その理由の一つは、消費者の視点が欠けていることにあると考えられる。例えば、牛乳には、特定の強いブランドがなく、広告やプロモーションも十分とは言い難い。そこで本研究では牛乳市場の活性化に向けて、牛乳のパッケージデザインに着目する。この理由は、魅力的なパッケージを構築することが、酪農産業全体のマーケティング意識を高めることにつながると考えられるからである。
本研究では、33名の消費者に対し定性的に調査を行った。その結果、パッケージの形態、機能、見た目に関する消費者の洞察が得られた。まずパッケージ容量では、北アイルランドの1世帯当たりの人数が減少傾向にあること、子どもの消費者が多いことを背景に、パッケージの内容量を旧来の1ガロンからハーフガロンやさらにそれよりも少ない内容量に対するニーズが高いことが示唆された。またパッケージの機能では、一度で牛乳を消費しきれないという消費者の声から再度封が可能になるパッケージや、開封しづらいという高齢者の意見を取り入れて、より開けやすいパッケージを検討する必要があることが示唆された。最後の見た目に関しては、消費者の牛乳に対するブランドロイヤルティが非常に低いということが確認されたことから、感情的な結びつきを強化するデザインが必要となることが示唆された。
本研究は、牛乳において魅力的なパッケージデザインを構築するための提案を行った。パッケージデザインは、生産者はより市場に思考を向けさせる役割にもなることから、製品の商業価値を上昇させるためのマーケティングツールとして位置付けるべきであろう。

<コメント>

北アイルランドの出来事はそのまま日本にも適用可能である。特にパッケージの容量に関しては、1-2人世帯が全世帯にしめる割合いでほぼ半分である日本の現状を考えれば自明である。その他物流効率、小売での棚への収納を優先しすぎて、消費者のニーズを汲み取ってこなかったパッケージであるが、これからの物流・小売の陳列技術の向上とともにマーケティング・サイドにおいても入念な準備の必要があろう。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000lg1w.html 

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2015年9月21日