2014年
著者:伊藤和子1・藤森英樹2・関野幸二3・石川志保4・大森裕俊5
所属:1宮城県農業・園芸総合研究所 2農研機構東北農業研究センター 3農研機構中央農業総合研究センター 4宮城県農産園芸環境課 5宮城県亘理農業改良普及センター
雑誌名・年・巻号頁:農村経済研究、32(2)、2014年8月、55−60

  • 社会文化
  • 酪農経済・経営

<要約>

課題:従来、稲発酵粗飼料(イネ・ホールクロップサイレージ。以下、イネWCS)の生産は、畜産農家と耕種農家が共に圃場条件や栽培条件を直接確認することが可能な地域内での相対取引が主流であったが、現在では広域流通が拡大してきている。
宮城県農業公社(以下、公社)を対象に、公社がイネWCSの広域流通に果たしている機能を明らかにし、それを踏まえて広域流通システムのモデル化を試みるとともに、その中の流通組織が果たすべき機能について検討する。
結論:公社の事例から、コントラクターとストックヤード(保管)及びバッファ部門を構成要素とした広域流通組織を中心に置き、耕種農家にはイネWCS生産への参入を容易にする役割を、畜産農家に対しては商品の信頼性を提供するといった機能を持ち合わせた広域流通システムモデルを策定した。
また、この広域流通システムモデルにおける流通組織の果たすべき機能としては、信用、価格、品質の要因を確保することが重要であることを指摘した。具体的には、信用については、①責任の所在の明確化(ラベル貼付による製品の品質証明)、②確実な供給体制(ロット形成と適切な分化)、③適切なクレーム処理及び対応(迅速、正確な事務処理)、④組織の認知度の高さである。価格については⑤運賃及び助成金込の実質的購入単価が輸入粗飼料価格に見合う価格水準である。品質については、⑥給与方法に合わせた適期刈り取り、⑦家畜の種類の嗜好性に対応した品質と表示(刈り取り時期、品種)、⑧畜種と生育ステージに合わせた製品とその表示である。また、耕種農家、畜産農家ともにメリットのある助成金制度は、⑤の価格水準に密接なつながりを持っており、イネWCSが流通するための前提になっている。

<コメント>

本論文は、広域流通が進展しつつあるイネWCSを対象に、広域流通が成立するために流通組織の果たすべき機能について明らかにしている。国内飼料基盤に立脚した畜産構造への変革が求められて久しいが、国産飼料原料の利用拡大には、栽培技術といった生産面での課題のほかに、流通面、特に需給を繋ぐ流通組織の機能が重要であることを認識させられる論文である。

書籍ページURL https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000lg1w.html

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2015年9月21日