2007年
著者:横打友恵、松本隆志
所属:ブエノスアイレス駐在員事務所
雑誌名・年・巻号頁:独立法人農畜産業振興機構月報「畜産の情報」(海外編)特別レポート、2007年9月

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<要約>

 チリの飲用牛乳の消費量水準は南米の近隣諸国と比べ極めて低い。このため、チリでは政府レベルで、「Yo Tomo(私は飲んでいる)」というキャンペーンによる飲用牛乳消費促進活動を行い、著名人を活用したCMにより、若年層に牛乳の位置付け見直しを呼びかけ、比較的大きな成果を上げた。98年設立されたFedelechaがその中心的な役割を担った。
今回の取り組みでは、従来の常識的な消費拡大路線と一線を画す内容で、牛乳を敬遠しがちな10代から20代前半の若年層への飲用乳の消費浸透を図ることをテーマとして、5年を中期の目標として2002年より開始された。
キャンペーン開始の年である2002年は、明確で直接的、驚きを伴うメッセージを通じて若者層にインパクトを与えることを狙った。この年は、「有名人の告白」をテーマに、スポットCMにさまざまな分野で活躍する著名人が目隠しで登場し、「昔からいろいろな場所で飲んでいた」と告白した。何を飲んでいたかを明らかにしないため、アルコールか麻薬か一体何を飲んでいたのかと話題になったところで、第2弾として、目隠しを外した彼らが再び登場し、「牛乳を飲んでいた」と告白する内容だった。
2年目の2003年は、テレビや出版物を通じ、知名度の高い俳優などが「真実を言いたい」と表情や感情豊かに告げ、牛乳は「皆」が飲むものであることを「牛乳のキャンペーンであることを気づかせず」好奇心をあおる形で訴えかけた。
2004年にはテレビ、インターネットを通じ、スポーツ選手、俳優、ミュージシャンなど10名の著名人が牛乳の入ったコップを手に裸で登場し、それぞれの言葉で牛乳の健康への効果を語る内容となっており、牛乳が世代を問わず「皆が飲む」重要な製品であることを著名人の立派な肉体でそのメリットを証明するキャンペーンを実施した。
2005年は「クール」をキャッチフレーズに、これまでのキャンペーンと同様に牛乳に対する若いイメージの浸透を働きかけ続けるとともに、栄養との結び付きの強い幼児や高齢者だけではなく、牛乳を異なる世代とライフスタイルに合う、日常の飲み物の一つの選択肢として、消費者の意識に植え付け、消費の場を拡大する方向に向けた。
2006年は「クール」から「スマート(賢い)」へ、牛乳を栄養面などから「現代的で前向きな飲み物」として、消費の新たな機会の強化を図った。「ロックバンド」や「スケートボーダー」のCMは、牛乳を飲む経験を「バイタリティ」や「エネルギー」に結びつけることに成功した。この年の予算総額はおよそ110万ドル(約1億3千万円)で、キャンペーンの媒体として、このうち約7割以上がテレビに向けられ、そのほかラジオ、新聞、インターネットなどを利用した活動のほか、夏を控えた11月からは、キャンペーンカーによる行楽地、スポーツ活動の場や学校などへのキャラバンで牛乳やノベルティグッズの無料配布が行われた。このキャラバンでは、130校以上の学校を訪問し、5万人以上の若者の参加があった。
この結果、牛乳が日常的な飲み物の選択肢の一つとして、消費者に確実に認識され、さらに牛乳の存在が家庭の外での活動に結び付けられるようになり、統計の上でも月間1人当たりの牛乳消費が1.52リットルから1.66リットルへ増加した。関係者によると、キャンペーンの中ではやはり2004年の「裸」が視覚的なインパクトを与えた点で反響が一番大きかったが、これまでの5年間が相乗的、累積的な効果を生んでいるという認識だった。

<コメント>

このチリでの事例は、テレビCMの活用が中心である。日本の「牛乳に相談だ」でもそのテレビCMの効果の大きさは抜きん出ていた。このことを考えるとやはりまだテレビCMの活用を考えるべきである。そしてその時は「牛乳に相談だ」のCM効果の資産を活かすべきであろう。

書籍ページURL https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000j5tk.html

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2015年9月21日