2012年
著者:上野恭裕
所属:大阪府立大学経済学部

  • 社会文化
  • マーケティング

はじめに

牛乳宅配業とは、乳業会社の販売戦略によって構築された牛乳販売流通ルートである。ほとんどの事業者は明治、森永乳業、雪印メグミルクといった大手乳業メーカーの販売特約店として稼働しているため、メーカー名と所在する地名を看板としている。例えば「森永牛乳○○販売所」といった屋号である。そのため牛乳宅配業というよりも「牛乳販売店」という方が、一般に親しみがある。
牛乳宅配業は1970年代に隆盛していた時代からすでに40年以上が経ったが、厳しい競争環境の中でも今までと変わらないスタイルで営業を続けている。その間に社会の変化、流通の変化、紙容器の技術革新、顧客の購入形態の変化といった牛乳宅配業にとって大きな波が幾度ともなく押し寄せてきた。牛乳宅配業を経営していく魅力や存在意義が薄れ、廃業していく事業主が増加している。
経済産業省の『産業別分類別年次別事業所数』より、牛乳小売業の事業所数の推移を見てみると、1976年に21,008件とピークに達した後、事業所数の減少が始まり、2007年では9,045件となっている。約30年で57%減少したことになる(図1)。
乳業メーカーの看板を背負って昭和の時代を生き抜いてきた牛乳宅配業は、社会の変化に取り残されていくのであろうか。地域密着型の事業システムといえる牛乳宅配業が、ネットスーパー等の新興勢力に対抗できず、ただただ衰退していくのであろうか。
本稿では牛乳宅配事業が牛乳飲用習慣の形成に、これまでどのような影響を与えてきたのか、またどのような意義を持っているのか、その影響は国によってどのように異なるのか明らかにし、牛乳宅配業が今後進むべき方向性を検討する。本稿は牛乳宅配事業が牛乳飲用習慣の形成に及ぼす影響要因の国際比較研究を目的としている。

書籍ページURL
 https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000hclf.html

2015年9月21日