2010年
著者:中村丁次
所属:神奈川県立保健福祉大学

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

総序論

牛乳は、カルシウムや良質なタンパク質が多く含まれ栄養価が高い食品であるため、いずれのライフステージにおいてもその摂取は栄養上重要である。ところが、平成20年の国民健康・栄養調査によると、乳類の摂取量は、男女とも20歳代から40歳代でその摂取量が低く、一日の摂取量は男性で80g、女性で70g程度ある。この年代のカルシウム摂取量をみると、男女とも一日約450mgの摂取で、日本人の食事摂取基準(2010年度版)で策定されている推奨量の60%に留まっている。この背景には、牛乳のもつ栄養学的意義よりも、「牛乳を飲むと太る」といった誤った認識が広まっていること、また健康志向の高い人たちにおいて、野菜ジュースやお茶等を飲む習慣が広まっていることも関連している可能性が考えられる。
また牛乳のもつ機能性は、食事と摂取した場合に栄養価を高め、食後の血糖上昇を抑制するだけでなく、牛乳の摂取により一日の消費エネルギーの10%程度を占める食後誘発性熱産生(diet-induced thermogenesis: 以下DIT)を増加させることが報告されている。DITは、自律神経活動を介したエネルギー調節機能の上で注目されており、牛乳がDITを上昇させることができれば、エネルギー出納を調節する機能を持つ食品としての付加価値が見出される。
そこで本研究では、まず「研究1牛乳が食後血糖に及ぼす影響」について、『食事バランスガイド』(2005年6月、厚生労働省と農林水産省が共同で策定)に基づいた食事構成、つまり主食、主菜、副菜が揃った日本人の一般的な食事パターンと牛乳の組み合わせが食後血糖の上昇に及ぼす影響を検討した。さらに、「研究2食事における牛乳摂取がDITに及ぼす影響」について、食事に付加する飲料として牛乳を摂取することがDITに及ぼす影響について、野菜ジュースを摂取した場合と比較して検討を行った。

書籍ページURL
https://j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html

2015年9月18日