乳成分による肥満モデルマウスのインスリン抵抗性改善効果に関する研究
2010年
著者:青江誠一郎
所属:大妻女子大学家政学部
要旨
【実験1】
乳より調製したカルシウムと乳糖を遺伝性肥満マウスに摂取させ、内臓脂肪型肥満および耐糖能にどのような影響を及ぼすかを検討した。
4週齢雄のKK/Taマウスを用い、1週間の予備飼育後、1群8匹の4群に群分けした。脂肪エネルギー比50%の高脂肪食に炭酸カルシウムとミセル性リン酸カルシウム(MCP)をCaとして0.5%添加した飼料を摂取させた。また、乳中の他の因子の影響を調べるため、ショ糖5%添加群と乳糖5%添加群を設けた。各飼料は、50日間自由摂食させて比較した。実験48日目に6時間絶食後、耐糖能試験を行った。マウスは4時間絶食後、エーテル麻酔下で採血し、肝臓、腹腔内脂肪を摘出後、重量を測定した。血清生化学値は酵素法により、血清ホルモン濃度はELISA法により測定を行った。肝臓脂質はFolch法により抽出後、同様に酵素法で分析した。各脂肪組織は、コールターカウンター(マルチサイザー3)によって脂肪細胞の大きさの測定を行った。統計解析は、カルシウムと糖質を因子とした二元配置分散分析により行った。
各群のマウスはいずれも肥満を呈したが、終体重はショ糖食と比べて乳糖食で有意に低かった。一方、各群の腹腔内の脂肪組織重量には有意差はなかった。また、血清レプチン濃度および空腹時血糖は、乳糖食で有意に低かった。肝臓重量、肝臓コレステロールおよびトリグリセリド蓄積量は、MCP群で有意に低かった。さらに、後腹壁脂肪は、MCP群で脂肪細胞の平均サイズが有意に小さく、肥大化が抑制された。血清インスリン濃度は、乳糖・MCP群で有意に低く、相乗作用が認められた。
以上の結果より、乳糖はショ糖に比べて体重増加を抑制し、血糖値を低下させることが示された。また、MCPは肝臓の脂質蓄積および脂肪細胞の肥大化を抑制することが示された。これらは、カルシウム代謝ホルモンおよび糖代謝ホルモンの分泌を介して脂質蓄積を抑制したと推定した。すなわち、MCPと乳糖を含む食品である乳製品の摂取が、脂肪蓄積の抑制や耐糖能の改善に相乗的効果があることが示唆された。
【実験2】
実験2では、乳由来カルシウムおよび乳糖の摂取が、ストレプトゾトシン微量投与による2型糖尿病モデルマウスにおいてどのような影響を及ぼすのかを検討した。
実験動物は4週齢のC57BL/6Jマウスを用い、1週間の予備飼育後、1群8匹の4群に群分けし、ストレプトゾトシン(STZ)微量投与(70㎎/㎏体重)により2型糖尿病を誘発させた。また、STZを投与しない群を6匹設けた。実験飼料は、脂肪エネルギー比50%の高脂肪食に炭酸カルシウムまたはレンネットカゼインより調製したミセル性リン酸カルシウム(MCP)をCaとして0.5%配合し、さらに、ショ糖5%添加群と乳糖5%添加群を設け、各飼料を30日間自由摂取させた。実験28日目に6時間絶食後、耐糖能試験を行った。31日目に4時間絶食後、エーテル麻酔下で採血し、肝臓、腹腔内脂肪組織を摘出後、重量を測定した。血清生化学値は酵素法で分析した。肝臓脂質はFolch法により抽出し血清と同様に測定した。血清ホルモン濃度はELISA法で分析した。脂肪組織は、コールターカウンター(マルチサイザー3)により脂肪細胞の大きさの測定を行った。統計解析は、カルシウムと糖質を因子とした二元配置分散分析により行った。
終体重、腹腔内脂肪量、血清遊離脂肪酸濃度、血清レプチン濃度、AUC、脂肪細胞サイズ、はMCP群で有意に低かった。肝臓重量および血清インスリン濃度はショ糖食においてMCP群が有意に低かったが、乳糖食においてはMCPの影響が検出できなかった。空腹時血糖値は乳糖食で有意に低かった。また、血清インスリン濃度は腹腔内脂肪重量および血清レプチン濃度との間に正の相関を示した。
以上の結果から、乳由来のカルシウムであるMCPの摂取は腹腔内脂肪の蓄積を抑制する作用があることが示された。これは、2型糖尿病モデルマウスにおいてMCPの摂取がインスリン上昇を抑制し、脂肪細胞における脂肪合成が抑制されたためであると考えられた。また、本研究では乳糖の有無がMCPの効果に影響を示したものであり、カルシウム単独で摂取するよりも牛乳として複数の有効成分を摂取することが有効であると考えられた。
書籍ページURL
https://j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html
乳より調製したカルシウムと乳糖を遺伝性肥満マウスに摂取させ、内臓脂肪型肥満および耐糖能にどのような影響を及ぼすかを検討した。
4週齢雄のKK/Taマウスを用い、1週間の予備飼育後、1群8匹の4群に群分けした。脂肪エネルギー比50%の高脂肪食に炭酸カルシウムとミセル性リン酸カルシウム(MCP)をCaとして0.5%添加した飼料を摂取させた。また、乳中の他の因子の影響を調べるため、ショ糖5%添加群と乳糖5%添加群を設けた。各飼料は、50日間自由摂食させて比較した。実験48日目に6時間絶食後、耐糖能試験を行った。マウスは4時間絶食後、エーテル麻酔下で採血し、肝臓、腹腔内脂肪を摘出後、重量を測定した。血清生化学値は酵素法により、血清ホルモン濃度はELISA法により測定を行った。肝臓脂質はFolch法により抽出後、同様に酵素法で分析した。各脂肪組織は、コールターカウンター(マルチサイザー3)によって脂肪細胞の大きさの測定を行った。統計解析は、カルシウムと糖質を因子とした二元配置分散分析により行った。
各群のマウスはいずれも肥満を呈したが、終体重はショ糖食と比べて乳糖食で有意に低かった。一方、各群の腹腔内の脂肪組織重量には有意差はなかった。また、血清レプチン濃度および空腹時血糖は、乳糖食で有意に低かった。肝臓重量、肝臓コレステロールおよびトリグリセリド蓄積量は、MCP群で有意に低かった。さらに、後腹壁脂肪は、MCP群で脂肪細胞の平均サイズが有意に小さく、肥大化が抑制された。血清インスリン濃度は、乳糖・MCP群で有意に低く、相乗作用が認められた。
以上の結果より、乳糖はショ糖に比べて体重増加を抑制し、血糖値を低下させることが示された。また、MCPは肝臓の脂質蓄積および脂肪細胞の肥大化を抑制することが示された。これらは、カルシウム代謝ホルモンおよび糖代謝ホルモンの分泌を介して脂質蓄積を抑制したと推定した。すなわち、MCPと乳糖を含む食品である乳製品の摂取が、脂肪蓄積の抑制や耐糖能の改善に相乗的効果があることが示唆された。
【実験2】
実験2では、乳由来カルシウムおよび乳糖の摂取が、ストレプトゾトシン微量投与による2型糖尿病モデルマウスにおいてどのような影響を及ぼすのかを検討した。
実験動物は4週齢のC57BL/6Jマウスを用い、1週間の予備飼育後、1群8匹の4群に群分けし、ストレプトゾトシン(STZ)微量投与(70㎎/㎏体重)により2型糖尿病を誘発させた。また、STZを投与しない群を6匹設けた。実験飼料は、脂肪エネルギー比50%の高脂肪食に炭酸カルシウムまたはレンネットカゼインより調製したミセル性リン酸カルシウム(MCP)をCaとして0.5%配合し、さらに、ショ糖5%添加群と乳糖5%添加群を設け、各飼料を30日間自由摂取させた。実験28日目に6時間絶食後、耐糖能試験を行った。31日目に4時間絶食後、エーテル麻酔下で採血し、肝臓、腹腔内脂肪組織を摘出後、重量を測定した。血清生化学値は酵素法で分析した。肝臓脂質はFolch法により抽出し血清と同様に測定した。血清ホルモン濃度はELISA法で分析した。脂肪組織は、コールターカウンター(マルチサイザー3)により脂肪細胞の大きさの測定を行った。統計解析は、カルシウムと糖質を因子とした二元配置分散分析により行った。
終体重、腹腔内脂肪量、血清遊離脂肪酸濃度、血清レプチン濃度、AUC、脂肪細胞サイズ、はMCP群で有意に低かった。肝臓重量および血清インスリン濃度はショ糖食においてMCP群が有意に低かったが、乳糖食においてはMCPの影響が検出できなかった。空腹時血糖値は乳糖食で有意に低かった。また、血清インスリン濃度は腹腔内脂肪重量および血清レプチン濃度との間に正の相関を示した。
以上の結果から、乳由来のカルシウムであるMCPの摂取は腹腔内脂肪の蓄積を抑制する作用があることが示された。これは、2型糖尿病モデルマウスにおいてMCPの摂取がインスリン上昇を抑制し、脂肪細胞における脂肪合成が抑制されたためであると考えられた。また、本研究では乳糖の有無がMCPの効果に影響を示したものであり、カルシウム単独で摂取するよりも牛乳として複数の有効成分を摂取することが有効であると考えられた。
書籍ページURL
https://j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html