妊娠中の母親の食事パターンと生まれた子のアレルギー発症との関連:大阪母子保健研究
2010年
著者:三宅吉博
所属:福岡大学医学部衛生・公衆衛生学
要約
妊娠中の母親の食習慣が生まれた子のアレルギー疾患発症に影響する可能性が考えられる。本出生前開始前向きコホート研究では、妊娠中の母親の食事パターンと生まれた子の生後16-24ヵ月時における喘鳴およびアトピー性皮膚炎リスクとの関連を調べた。対象は763組の母子である。食事歴法質問調査票を用いて、妊娠中の母親の食習慣に関するデータを得た。145品目の食品を33の食品群に再分類し、因子分析により食事パターンを導き出した。国際的疫学研究であるInternational Study of Asthma and Allergies in Childhoodで使用された質問を用いて、喘鳴とアトピー性皮膚炎を定義した。ベースライン調査時の母親の年齢、妊娠週、居住地域、家計の年収、母親と父親の教育歴、母親と父親のアレルギー既往歴、妊娠中の食事変容、ベースライン調査時の季節、妊娠中の母親の喫煙、子の年上兄弟数、子の性別、子の出生時体重、3回目調査時の月齢、家庭内喫煙状況、母乳摂取期間を交絡因子として補正した。3つの食事パターンが抽出された。一つは「健康型」で、緑黄色野菜、その他の野菜、海草類、マッシュルーム、豆類、芋類、魚介類、果物の摂取量が多いことで特徴づけられた。2つめは、「西洋型」で、油脂類、調味料、肉類、肉加工品、卵類、緑黄色野菜以外の野菜の摂取量が多いことで特徴づけられた。3つめは、「日本型」で、米、みそ汁、魚介類の摂取量が多いことで特徴づけられた。粗の解析で、妊娠中の母親の西洋型食事パターンと生まれた子の喘鳴リスクとの間に負の量-反応関係の傾向が認められた。交絡因子を補正すると、その負の関連は強まり、第一4分位に対する第四4分位の補正オッズ比は、0.59(95%信頼区間:0.35−0.98,傾向性p値=0.02)と統計学的に有意となった。西洋型食事パターンと子のアトピー性皮膚炎との間に有意な関連は認めなかった。健康型食事パターンおよび日本型食事パターンとも、生まれた子の喘鳴およびアトピー性皮膚炎との間に有意な関連はなかった。妊娠中の母親の西洋型食事パターンは生まれた子の喘鳴発症に予防的であるのかもしれない。
書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html
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