2009年
著者:木下英樹
所属:宮城大学食産業学部

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん

要約

プロバイオティック乳酸菌を評価する上で重要なファクターの一つに腸管付着性が挙げられるが、腸管付着性試験は操作が煩雑であり、時間とコストがかかるのが難点である。また、最近、乳酸菌の菌体表層にグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)が発現し、付着因子として作用していることが明らかになった。そこで本研究では、菌体表層GAPDHの網羅解析と酵素活性を指標とした高腸管付着性乳酸菌の新規スクリーニング法の確立を目指して研究を行った。ヒト腸管組織由来乳酸桿菌30菌株および漬物やキムチなど様々なサンプルから単離した47菌株について、GAPDH酵素活性を測定したところ、高頻度でGAPDH活性が検出された。また、SDS-PAGEにおいてもGAPDHと思われる40kDa付近のバンドが確認された。本結果から、乳酸桿菌の菌体表層には、普遍的にGAPDHが存在し、腸管付着性に寄与している可能性が示された。また、BIACORE腸管付着性試験においても、GAPDH活性とSDS-PAGEでのバンドの濃さは、ある程度付着性試験の結果と一致したことから、GAPDH活性を指標とした高腸管付着性乳酸菌のスクリーニング法の可能性が示唆された。しかしながら、GAPDHのみでは、全ての高腸管付着性乳酸菌の選抜をするのは難しく、複数の酵素を組み合わせたスクリーニング法など更なる改良の余地が残された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001mnub.html
キーワード:
プロバイオティクスグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素GAPDH

2015年9月18日