2009年
著者:戸塚護
所属:東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん

要約

ストレス負荷は自律神経系や内分泌系の変化のみならず、免疫系にも影響を与える。炎症性腸疾患や過敏性腸症候群、アレルギー疾患の発症・増悪にストレスが関与する可能性も知られている。一方、プロバイオティック乳酸菌はストレス緩和効果を示すことが報告されている。ストレスが誘導し免疫応答が関与するアレルギー性の腸炎症モデルを確立することは、上記の疾患の発症機構の解析や、プロバイオティック乳酸菌の効果の解析に有用である。そこで本研究では、ストレス誘導性のアレルギー性腸炎モデルの確立を目指した。常時振動や騒音が認められる飼育箱において、卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体の遺伝子導入マウス(DO11.10)に20%OVA含有水を自由摂取させた場合、通常の飼育環境ではみられない顕著な体重減少を伴う腸炎症状が観察された。すなわち、DO11.10マウスではストレス負荷とOVA摂取が同時に起こることで免疫学的機序を伴う腸炎症が起こるものと推定された。実際、4時間の拘束ストレス下でのOVA摂取を検討した結果、OVA摂取のみの群と比較して顕著な体重減少が認められた。ストレス負荷のみの群でもこのような変化は観察されなかったことから、このモデルではストレス負荷が免疫応答に変化を与え体重減少を伴う変化が生じることが示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001mnub.html

2015年9月18日