2009年
著者:小澤英浩
所属:松本歯科大学総合歯科医学研究所

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

牛乳・乳製品には、Ca吸収や骨代謝を促す効果が知られている。牛乳等に含まれるラクトフェリン(LF)は、骨代謝機能や骨強度を高めることが報告されている。しかしながら、LFの骨代謝に関する幹細胞への効果は、詳細に検討されていないのが現状である。今回、我々は、LFの骨組織に対する効果を調べるとともに、間葉系幹細胞、造血系幹細胞への作用を検討した。マウスを用いたin vivo実験では、LF投与は、卵巣摘出したマウスにおいて、骨量減少を抑制した。そして、in vitro実験において、LF刺激は、多分化能を有する間葉系幹細胞株であるC3H10T1/2細胞の骨芽細胞分化を促進し、脂肪細胞分化を抑制した。この結果は、LF摂取により間葉系幹細胞の脂肪細胞分化が抑制されることで、骨芽細胞分化へ移行しやすい環境が調節されることを示唆している。また、破骨細胞分化誘導の実験では、共存培養系および骨髄細胞培養系、どちらにおいても、LF刺激は破骨細胞分化を抑制したが、共存培養系の方がLF濃度高レベルでその効果が得られた。このことより、LF刺激による破骨細胞分化には、造血系幹細胞に直接的に働く抑制機構と間葉系幹細胞および骨芽細胞のRANKL発現による促進機構により調節されていることが示された。すなわち、LF刺激では、造血系幹細胞に働く作用の方が優位に働くため、破骨細胞分化が抑制されたと考えられる。
以上のことより、LFは間葉系幹細胞の脂肪細胞分化を抑制することで、骨芽細胞分化に適した環境を調節する。そして、LFは破骨細胞分化を抑制することで、骨量減少を抑制し、骨質を維持することが示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001mnub.html 

2015年9月18日