2008年
著者:井越敬司
所属:東海大学農学部

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん

要約

チーズの機能性を、現在注目されている食品の抗酸化能の視点から、チーズの1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(以下DPPH)ラジカル消去活性について研究した。10種類の各種市販チーズ(モツツアレラ、カマンベール、ポンレベック、ブルー、ゴーダ、マリボ一、グリエール、エメンタール、エダム、パルミジャールッジャーノ)から70%エタノール可溶性画分を調製し、そのDPPHラジカル消去活性について調べた。その結果、ポンレベック、カマンベールおよびブルーチーズに高いラジカル消去活性が見出され、またラジカル消去活性はチーズの熟成率(水溶性窒素/全窒素)と高い相関性(r = 0.9714)が認められた。白カビ系チーズ9種類(輸入カマンベール4種類(マリーハレル、ジロ、ボカージュ、プレジデント、)および国産カマンベール3種類(A、B、C)およびシャウルス、ブリード・モー)について、それらチーズの70%可溶性画分のDPPHラジカル消去活性を調べた。その結果、最も活性が高く認められたのはマリーハレルとジロで、次いでシュウルスであった。国産カマンベールは最も低かった。これらチーズのペプチド量あるいは遊離アミノ酸量とDPPHラジカル消去活性との相関性を調べた。その結果、アミノ酸量とラジカル消去活性には相関性(r=0.5097)は低かったが、ペプチド量と消去活性には高い相関性(r=0.8922)が得られた。このことからDPPHラジカル消去活性成分のーつとしてペプチドが考えられた。
比較的活性が高く認められたマリーハレルの70%エタノール可溶性画分を用いて、DPPHラジカル消去活性成分の分離精製を行った。ダイヤイオンHPを用いて活性成分を分離した結果、活性は吸着および未吸着の両画分に認められた。しかし、活性は未吸着画分の方が高いことから、本画分をODSカラムおよびHILICカラムクロマトグラフィーにて精製した。精製成分をUVスベクトル、質量分析およびuricaseを用いた比色法により活性成分の同定を試みたところ、活性本体のひとつが尿酸と一致することが明らかとなった。従って、チーズ中のDPPHラジカル消去成分の一つは尿酸であることが知られた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001ahym.html
キーワード:
チーズ熟成機能性DPPHラジカル消去

2015年9月18日