牛乳由来ペプチドの抗動脈硬化作用に関する研究
2008年
著者:駒井三千夫
所属:東北大・院農・栄養学
要約
SD系ラットを用いて、カゼインの微生物酵素分解物が血中コレステロール値に及ぼす影響を評価するために、高コレステロール・高コール酸食条件下で7週間給餌した。すなわち、Bacillus thermoproteolyticusの産生するエンド型プロテアーゼであるサーモリシン消化されたカゼインの消化物をラットに長期投与して、血漿コレステロール値の上昇抑制について検討した。その結果、カゼインのサーモリシン消化物で飼育1週間目から血漿総コレステロール値の上昇抑制が観察され、3週目以降ではカゼイン群よりも平均値で95mg/dlも低い値が観察された。また、血紫総コレステロール値のほかに、HDL-コレステロール値の改善や血漿トリグリセリド値の改善も観察された。また、カゼイン分解物を単回摂取させた24時間のコレステロール値の変化では、未分解カゼイン摂取で見られた一時的なコレステロール値の上昇が観察されず、単回摂取の場合にも血中コレステロール上昇を抑制していることが示唆された。腸管におけるコレステロール吸収阻害作用により血中コレステロール上昇を抑制するとされている大豆タンパク質給餌と比較して、血漿と肝臓コレステロール代謝および糞便中ステロール排世が有意に増えていなかったため、カゼインサーモリシン分解物の血中コレステロール値上昇抑制効果は、大豆タンパク質とは異なる作用機序を介しているものと考えられた。カゼインサーモリシン分解物のこの作用メカニズムの解明には、さらに詳細な検討を要する。
書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001ahym.html
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https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001ahym.html
- キーワード:
- カゼイン分解物サーモリシンカゼイン血漿コレステロール値