2008年
著者:大日向耕作
所属:京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻 食品生理機能学分野

  • 健康科学
  • その他

要約

β-ラクトテンシン(His-Ile-Arg-Leu)は、牛乳β-ラクトグロブリンのキモトリプシン消化により派生する回腸収縮ペプチドで、これまでにコレステロール低下作用、胆汁酸分泌促進作用、学習促進作用を有する多機能性ペプチドであることを明らかにしている。さらに最近、β-ラクトテンシンがマウスにおいて摂食抑制作用を有することを新たに見出した。そこで本研究では、β-ラクトテンシンの摂抑制機構について検討した。
摂食抑制ペプチド受容体に対する種々のアンタゴニストを用いて、その作用機構を検討したところ、β-ラクトテンシンの摂食抑制作用は、corticotropin-releasing factor(CRF)受容体のアンタゴニスト(astressin)とcalcitonin gene-related peptide (CGRP)受容体のアンタゴニスト(CGRP(8-37))によって阻害された。なお、β-ラクトテンシンはCRFおよびCGRPの受容体には親和性を示さなかったことから、これらの受容体の活性化を介しているものと考えられる。なお、CRFの摂食抑制作用は、CGRPアンタゴニストで阻害される一方、CGRPの摂食抑制作用は、CRFアンタゴニストでブロックされなかった。すなわち、CRF受容体の下流でCGRP受容体が活性化されることを新たに見出したことになる。以上の結果より、β-ラクトテンシンは、CRF受容体の下流で、CGRP受容体を活性化し、摂食抑制作用を示すことが判明した。β-ラクトテンシンは新しい摂食抑制経路CRF-CGRP系を介する初めての摂食抑制ペプチドである。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001ahym.html
キーワード:
摂食抑制牛乳タンパク質β-ラクトグロブリンβ-ラクトテンシン

2015年9月18日