2007年
著者:熊江隆
所属:独立行政法人国立健康・栄養研究所上級研究員

  • 健康科学
  • 乳児・周産期・女性の健康
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

要約

本研究においては、特記すべき運動習慣等を有せず、朝夕の食事が供給される大学の学生寮で集団生活を行っているBody Mass Index (BMI値)でやせ傾向の女子大生を対象に、牛乳の摂取による体脂肪の制御効果に関する介入研究を6ヶ月間行った。本研究では、牛乳を摂取させる被験者を開始時の体脂肪率で低体脂肪群(15名)と高体脂肪群(14名)の2に分け、牛乳を摂取する習慣の無い女子大生を対照群(10名)として選出した。
6ヶ月間の介入研究において、開始時、3ヶ月後、及び6ヶ月後の3回、骨密度の測定を含む身体計測を行い、同時に採血を行って一般血清生化学検査、一般血液検査、血漿中アディポサイトカイン濃度、及び血清の抗酸化バランスを測定した。さらに、生活・身体状況、心理状況・疲労、及び食事摂取状況に関するアンケートを行った。
被験者をBMIが18.5(kg/m^2)から20.0の間で募集したが、開始時のBMIの平均値は低体脂肪群18.5、高体脂肪群20.1、及び対照群19.2、であった。皮脂厚法で求めた高体脂肪群の体脂肪率は調査時期で有意に変動し、6ヵ月後に有意に低下した。インピーダンス法と皮脂厚法の平均でみても、高体脂肪群の体脂肪率は6ヵ月後に低下する傾向を示しており、牛乳摂取による体脂肪制御効果の可能性も考えられる。
血漿中アディポサイトカイン濃度は、3群共にほぼ同一レベルであった。Leptinは、対照群では6ヶ月後に有意に増加、低体脂肪群と高体脂肪群では6ヶ月後に上昇傾向がみられた。Adiponectinは、3群共に3ヶ月後に低下、6ヶ月後に開始時より上昇するという同一の傾向を示した。一方、TNFαは3群全てで6ヵ月後に有意に増加し、Lep出の上昇傾向はTNFαの有意の増加と関連している可能性も考えられる。
血清の抗酸化バランスにおいて、総抗酸化能(TAA) は生体内の抗酸化能の重要な指標と考えられている。対照群ではTAAが3ヶ月後と6ヶ月後に有意に著しく低下したが、この低下が高体脂肪群では軽減され、低体脂肪群では無くなったとも考えられ、牛乳摂取によって生体内の抗酸化能が改善した可能性も示唆される。
栄養素摂取量は、牛乳摂取により低体脂肪群と高体脂肪群では大きく変動し、特にカルシウム、リン、ビタミンB2、及びパントテン酸で著しく増加した。一方、この両群でエネルギー摂取量は3ヶ月後と6ヵ月後に増加傾向を示したが、有意差は認められなかった。食品群別の摂取量でも、「乳類」の摂取量が3ヶ月後と6ヵ月後に300-400g増加しており、1日500mLで全期間の摂取率が90%であった事をよく反映していると思われる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001a9vl.html 
キーワード:
アディポサイトカインアンケート調査一般血液検査一般血清生化学検査

2015年9月18日