2007年
著者:下村吉治
所属:名古屋工業大学工学研究科

  • 健康科学
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

要約

骨格筋の萎縮は、筋不活動及び老化などによってもたらされるが、その予防策を検討することは重要である。タンパク質摂取は、筋タンパク質の維持に重要であり、摂取タンパク質のアミノ酸組成によりその効果が異なる可能性が考えられる。その例として、乳タンパク質を構成するカゼインと乳清タンパク質があげられる。カゼインと比較し、乳清タンパク質は消化吸収が速いタンパク質であり、そのアミノ酸組成においては、タンパク質合成を促進する分岐鎖アミノ酸をカゼインよりも多く含む。そこで、本実験では、ラット後肢懸垂によって起こる骨格筋の萎縮に対する食餌中の乳清タンパク質とカゼインの影響を比較した。5週齢雄ラットを5日間の予備飼育
後、後肢懸垂中の食餌により、カゼイン群と乳清タンパク質群に分けた。また、後肢懸垂しない通常飼育のラットを後肢懸垂の対照として、同様にカゼイン群と乳清タンパク質群に分け、合計4群とした。[実験1]カゼイン食と乳清タンパク質食ともに食餌中タンパク質含量をAIN-93Gと同様の17.08%とした。カゼイン食としてAIN-93Gを用い、乳清タンパク質食としてAIN-93G中のカゼインを乳清タンパク質に置き換えた餌を用いた。[実験2]食餌中タンパク質含量を、カゼイン食と乳清タンパク質食ともに30%とした。両実験とも、6日間の後肢懸垂後、ペントバルビタールナトリウム麻酔下で屠殺し、ヒラメ筋を採取した。体重、摂食量、ヒラメ筋重量、筋タンパク質濃度を測定した。両実験ともに、体重、摂食量に差は見られなかった。また、ヒラメ筋重量は、6日間の後肢懸垂により、約55%に減少したが、食餌群聞では差はなかった。しかし、実験1では、後肢懸垂による総タンパク質濃度の減少は、カゼイン群と比較して、乳清タンパク質群で抑制される傾向が見られた。実験2では、筋総タンパク質濃度の減少は、乳清タンパク質群と比較して、カゼイン群で有意に抑制された。これらの結果より、後肢懸垂による筋タンパク質の減少に対する食餌タンパク質の乳清タンパク質とカゼインの影響は、食餌タンパク質含量によって異なることが示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001a9vl.html 
キーワード:
乳清タンパク質カゼイン食餌タンパク質分岐鎖アミノ酸

2015年9月18日