2005年
著者:伏木亨
所属:京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻栄養化学分野

  • 健康科学
  • その他

緒言

食品それぞれには、生体に対して何らかの作用、機能をもつ。このような観点で食品をとらえることは近年ようやく盛んになってきた。しかしながら微量で効果を持つような薬品に近いと考えられる成分とは異なり、我々が日常的に摂取する食品タンパク質では単に栄養素として考えられる場合が殆どであり、身体の成長や維持に必要な材料としての認識が一般的であろう。このため動物実験などでは特に体重の増大が第一の指標とされ、より強い活性を持つ成分を検証するための単なるベースとしての役割を持たされるのが普通である。
タンパク質の中で他者に摂取されることを前提として産生されるものはミルクタンパク質が唯一のものであり、身体を構成するたんぱく質を生合成するための材料として好適であるのは当然であろう。我々は食品の質を評価する手段として体重増加とは全く異なる指標である、持久運動能力を正確に測定する方法を開発した。この過程で、実験動物の体重増加に適した市販固型飼料が持久運動能力の増大という面からは必ずしも最適な食餌ではなく、いくつかのタンパク質の中でもミルクタンパク質であるカゼインをベースにした飼料がこの能力増大に有意に貢献することを見いだした。また昨年度の本事業の助成により行った研究で、カゼインだけでなくホエーを含んだ飼料にも同様の効果がある事を示唆する結果を報告した。
本研究においては、このような作用がエネルギー代謝的にどのような効果によって現われるのかを検討した。また持久運動能力の向上には(肉体的能力の向上と不可分と考えられるが)疲労を感じにくいと言う理由ゆえに改善されている部分があると予想される。動物にどの程度疲労が生じているかを測定する系はまだ十分に整備されているとは言えない。そこで摂取する食餌や薬剤によって、動物の疲労度(行動する意欲の大きさを自発行動量によって評価する)が影響を受けるかどうかを検討する実験系を確立し、ミルクタンパク質の効果を測定した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/8d863s000006ur12.html

2015年9月18日