2005年
著者:柳田晃良
所属:佐賀大学農学部生命機能科学科

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

近年、食生活の欧米化や運動不足などにより、肥満、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧などの生活習慣病が増加しており、その多くは過食、運動不足などを基盤とした肥満、とくに内臓脂肪の蓄積に起因している事が知られている。現在、日本人の約20%以上が肥満症である。その予防には食事中の機能性成分が有効であり、なかでも食事脂肪の量と質の役割が大きいことが知られている。
近年注目を集めている共役リノール酸(Conjugated linoleic acid ; CLA)は鎖中に共役二重結合を持つリノール酸の位置・幾何異性体で、乳製品や肉製品に含まれている脂肪酸である。これまでに抗動脈硬化作用、抗肥満作用および抗ガン作用など多彩な生理作用が報告されている。しかしながら、マウスはCLAに過剰に高応答性を示すために、人における脂肪萎縮症に類似した症状を示すことが報告されている。本研究では、CLAのHyper-responderであるマウスにおける糖・脂質代謝に及ぼす影響の解明を行なった。
その結果、マウスにおける脂肪萎縮症様病態の発症は、CLA摂取により過剰に脂肪組織が減少するために、糖・脂質代謝に重要な脂肪組織由来ホルモン様物質であるアディポサイトカインが欠乏するためであることが示唆された。一方、CLA短期摂取では脂肪萎縮症様病態を発症させず、脂質低下作用を発揮することが確認された。また長期摂取においても、肝臓脂質低下作用を持つ脂肪酸であるドコサヘキサエン酸と同時摂取することにより、病態発症を改善できることが示された。今後CLAを安全に使用するためには、マウスにおける高応答性のメカニズムをより詳細に解明する必要性があると考えられた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/8d863s000006ur12.html
キーワード:
共役リノール酸マウス脂肪萎縮症アディポサイトカイン

2015年9月18日