牛乳タンパク質による腸細胞増殖阻害とその感染予防及び治療への応用
2004年
著者:金丸義敬
所属:岐阜大学農学部生物資源利用学科
要約
in vitroでの培養腸細胞の増殖及びin vivoでのヒトロタウィルスによる乳飲みマウス下痢症に及ぼす牛乳の主要乳清タンパク質α-ラクトアルブミン(α-LA)とβ-ラクトグロブリン(β-LG)の影響を検討した。ネイティブモノマーのα-LA は培養腸細胞の増殖を有意に促進させたが、還元条件下のSDS-PAGE で非解離性(SDS 安定性)のダイマー/オリゴマーを含む状態では細胞死を誘導した。同様に、ネイティブダイマーのβ-LG は培養腸細胞の増殖を有意に促進させたが、SDS 安定性ダイマー/オリゴマーを含む状態では細胞増殖の停止を引き起こした。ロタウィルス感染後の乳飲みマウスへのネイティブモノマーα-LAの経口投与は感染からの回復を穏やかに促進させた。一方、SDS安定性ダイマー/オリゴマー含有α-LA の経口投与は下痢の劇的治癒をもたらした。同様に、ネイティブダイマーβ-LGの経口投与は感染からの回復を著しく促進させ、また、SDS ダイマー/オリゴマー含有β-LG の経口投与は有意な下痢の治癒効果を示した。以上から、in vitroで認められる牛乳乳清の主要タンパク質による細胞増殖制御作用は、促進及び阻害のいずれの場合においても、in vivoでの有効な整腸作用につながるものと考えられる。
書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/8d863s000004dmbk.html
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- キーワード:
- α-ラクトアルブミンβ-ラクトグロブリンIEC-6 細胞Caco-2 細胞