2004年
著者:山田哲雄
所属:関東学院大学人間環境学部健康栄養学科

  • 健康科学
  • 高齢者
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

要約

本研究では、普通牛乳をカルシウム強化牛乳に切り替える介入的手法を用いることにより、高齢者の骨代謝に及ぼすカルシウム強化牛乳摂取の効果について検討した。
平成15年度に続き16年度にも採血・採尿に参加したケアハウス入居者男性11名、女性49名の計60名を対象とした。カルシウム強化牛乳摂取群(強化牛乳摂取群と略)は男性8名、女性36名の計44名、非摂取群(対照群と略)は男性3名、女性13名の計16名であった。1年間の介入前後に、食物摂取状況および身体活動状況(歩行数)調査、早朝・空腹時の血液および第2尿の採取、右踵骨部超音波伝播速度測定を実施した。
骨形成マーカーとして血清骨型アルカリ性ホスファターゼ(BAP)、オステオカルシン(OC)を、骨吸収マーカーとして尿中Ⅰ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(NTx)、デオキシピリジノリン(DPD)を各々測定した。合わせて、副甲状腺ホルモンintact(PTH)と1α,25-(OH)2ビタミンD(1α,25-(OH)2D)を測定し、これらの指標をもとに骨代謝について検討した。主な結果は、以下のとおりであった。
1)男性の強化牛乳摂取群では、骨代謝マーカーは有意な変動を示さず、PTHと1α,25-(OH)2Dが各々有意に上昇した。
2)女性では、次の結果が得られた:
① NTxが、強化牛乳摂取群で有意に低下した。また、強化牛乳摂取群のNTxとDPDにおいて、[介入前値]~[介入後の変動量(介入前値-介入後値)]との間に有意な相関がみられた。
② PTHが、強化牛乳摂取群と対照群でともに有意に上昇したが、両群の介入後の変動量間には有意差はみられなかった。
③ 1α,25-(OH)2Dが、強化牛乳摂取群で有意に上昇した。
以上のことから、「カルシウム強化牛乳の摂取が、骨吸収マーカーであるNTxを低下させることにより高齢者の骨代謝に対して有効となる」ことが示唆された。その機序については、ビタミンDの栄養状態や代謝を含めた検討がなお必要である。
今後、被験者の負担が少ない骨吸収マーカーを用いて例数を増やすことにより、本研究結果の信頼度を上げることが可能であると考える。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/8d863s000004dmbk.html 
キーワード:
カルシウム強化牛乳高齢者骨形成骨吸収

2015年9月18日