ヒトにおける乳糖の一過性下痢に対する最大無作用量とそれに及ぼす食べ方に関する研究
2001年
著者:奥恒行
所属:県立長崎シーボルト大学看護栄養学部
研究目的
牛乳を飲むと、便が緩んだり、下痢を生じる人のいることが古くから知られているが、これは牛乳に含まれる乳糖の一部が消化されずに大腸へ到達するためと考えられている。特に、日本人は小腸粘膜に存在するラクターゼ活性が欧米白人に比べて全体的に低いために、牛乳を一度に大量に摂取すると未消化の乳糖の大腸への流入量が多くなって高浸透圧性の下痢が生じやすいと考えられている。消化酵素であるラクターゼ活性が低いか、あるいは欠損しているために牛乳摂取によって下痢を生じ易い人を乳糖不耐症と呼んでいる。しかしながら、牛乳をかなり大量に飲んでも下痢を誘発しない日本人が存在することも事実である。さらに、先に行った予備実験において、乳糖による下痢誘発性は、乳糖単独摂取よりも牛乳中の乳糖換算量の方が強い傾向が見られた。すなわち、一過性下痢に対する乳糖の最大無作用量は、乳糖単独摂取よりも牛乳などに含まれるいろいろな成分(ミネラル、たんぱく質、脂質など)と共存する方が低いように感じられた。
小腸粘膜ラクターゼ活性は哺乳期に高く、離乳後徐々に低下する。また、小腸粘膜ラクターゼ活性は基質誘導性を持っていることも知られている。さらに、消化されずに大腸に流入した乳糖は腸内細菌によって資化(発酵分解)され、利用される。腸内細菌叢は食事、年齢、体調、環境、ストレスなどのいろいろな要因によって変化するので、腸内細菌による乳糖の資化性は個人差が大きく、乳糖の繰返し摂取によっても影響されることが考えられる。
しかしながら、現代の日本人がどの程度まで牛乳あるいは、それに含まれる乳糖を摂取しでも下痢等の副作用を誘発しないかは明らかでない。外国人についても系統立てて下痢に対する最大無作用量(許容量)を測定した報告は見られない。乳児についてはその許容量の概算値を示したものがある程度である。日本人における乳糖摂取によって引き起こされる一過性下痢に対する最大無作用量を明らかにしておくことは、栄養価が高い食品として栄養補給を勧めるときや骨粗鬆症などの予防を意識して、牛乳をはじめ乳製品の積極的摂取を勧めるときの目安として、栄養教育・栄養指導を行う上で必要である。また、牛乳の飲み方や乳製品の食べ方によって下痢誘発性がどのように変化するかを明らかにしておくことは、適正な栄養教育・栄養指導を行う上からも重要であると考える。
本研究の目的は、日本人成人における乳糖の下痢に対する最大無作用量(許容量)を明らかにし、他の難消化性糖アルコールやオリゴ糖の最大無作用量と比較・検討することである。次に、乳糖の単独摂取と牛乳など複合成分が含有する食品の形態による摂取によって、乳糖の最大無作用量がどのように影響されるかを検討することである。さらに、乳糖を消化するラクターゼ活性ならびに乳糖に対する腸内細菌の資化性が日本人においてどの程度であるかを明らかにすることである。
書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021dt1.html
小腸粘膜ラクターゼ活性は哺乳期に高く、離乳後徐々に低下する。また、小腸粘膜ラクターゼ活性は基質誘導性を持っていることも知られている。さらに、消化されずに大腸に流入した乳糖は腸内細菌によって資化(発酵分解)され、利用される。腸内細菌叢は食事、年齢、体調、環境、ストレスなどのいろいろな要因によって変化するので、腸内細菌による乳糖の資化性は個人差が大きく、乳糖の繰返し摂取によっても影響されることが考えられる。
しかしながら、現代の日本人がどの程度まで牛乳あるいは、それに含まれる乳糖を摂取しでも下痢等の副作用を誘発しないかは明らかでない。外国人についても系統立てて下痢に対する最大無作用量(許容量)を測定した報告は見られない。乳児についてはその許容量の概算値を示したものがある程度である。日本人における乳糖摂取によって引き起こされる一過性下痢に対する最大無作用量を明らかにしておくことは、栄養価が高い食品として栄養補給を勧めるときや骨粗鬆症などの予防を意識して、牛乳をはじめ乳製品の積極的摂取を勧めるときの目安として、栄養教育・栄養指導を行う上で必要である。また、牛乳の飲み方や乳製品の食べ方によって下痢誘発性がどのように変化するかを明らかにしておくことは、適正な栄養教育・栄養指導を行う上からも重要であると考える。
本研究の目的は、日本人成人における乳糖の下痢に対する最大無作用量(許容量)を明らかにし、他の難消化性糖アルコールやオリゴ糖の最大無作用量と比較・検討することである。次に、乳糖の単独摂取と牛乳など複合成分が含有する食品の形態による摂取によって、乳糖の最大無作用量がどのように影響されるかを検討することである。さらに、乳糖を消化するラクターゼ活性ならびに乳糖に対する腸内細菌の資化性が日本人においてどの程度であるかを明らかにすることである。
書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021dt1.html