2000年
著者:石川和子
所属:国立健康・栄養研究所健康増進部

  • 健康科学
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

要約

背景:女性の骨量は、初潮、妊娠、出産、閉経などにより大きく影響を受ける事が知られているため、栄養や運動の影響もライフステージによって異なることが予測される。
目的:日本人女性を対象に、ライフステージ別に牛乳・乳製品の摂取、運動と骨量の関係を検討する。
研究方法:15-69歳の日本人女性を対象に断面的および縦断的に牛乳・乳製品の摂取、運動習慣と骨量の関係を検討した。その際、妊娠経験の有無、閉経の有無などを考慮し、ライフステージにより、牛乳・乳製品の摂取、運動の実施と骨量の関係が異なるかどうかにも注目した。
結果:高校生においては、断面的、縦断的いずれからみても運動が骨量の増大に有効であり、運動をしていなかった者では減少傾向にあった。栄養面では縦断的にみると、牛乳摂取の多い者や摂取頻度の増えた者で骨量が増える傾向にあった。
若年女性においては断面的には、出産経験のない者、出産後36ヶ月以上の者では運動を実施していた者では有意に骨量が高く、カルシウム摂取の高い者で骨量が高い傾向がみられた。出産後12-35ヶ月では牛乳摂取頻度の高い者、カルシウム摂取の多い者で骨量は有意に高かった。縦断的には、出産経験の有無、出産後年数別の検討はできなかったが、運動を継続した者、始めた者では骨量は高くなった。また、運動をしていない者の中では、乳製品、小魚、大豆製品の摂取頻度の多かった者、摂取頻度の増えた者で骨量は増加した。
中高年では閉経前では縦断的にみると運動の実施により骨量が高くなる可能性が示唆された。生理不順や閉経直後の者ではライフスタイルと骨量の関係は検討しにくいものの、断面的にはカルシウムの摂取が高い者で骨量が高く、縦断的には、運動の実胞により骨量の減少が押さえられた。閉経後6、7年以上経過した者では運動により骨量の減少を抑制し、高い骨量を維持していた。高いカルシウムの摂取も骨量の減少を抑制する可能性を示唆していた。
まとめ:高校生では、運動の実施や牛乳摂取頻度が高いことで骨量を増加する一方で、運動不足やカルシウム摂取不足により骨量が減少する可能性も示唆された。骨量は断面的にみると20-30歳代でピークを迎えるとされているが、本研究からは、40歳代以降でも運動の実施や高いカルシウム摂取で、骨量が増加する可能性が示された。閉経以降でも、運動の実施や高いカルシウム摂取により骨量の減少を抑え、高い骨量の維持に有効であることが示めされた。また、これらライフスタイルと骨量の関係は、妊娠や閉経後の時期により違いがあることが示された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021e2i.html 
キーワード:
骨量牛乳・乳製品運動ライフステージ

2015年9月18日