1999年
著者:小澤英浩
所属:新潟大学歯学部

  • 健康科学
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

本研究課題の目的と意義

骨は石灰沈着より形成される剛体である。しかし、骨組織は加齢現象や内外の環境変化に応じてダイナミックに形態変化する。骨組織の形態変化は、歯科臨床領域においては歯科矯正や顎骨延長術などに応用される一方、病的変化である骨粗鬆症や変形性関節症は、咬合・咀嚼機能の低下、顎関節の変形、義歯の不安定化などの障害を招き、超高齢化社会においては生活の質(quality of life)や生産性を低下させるため、大きな社会的な問題となっている。したがって、骨の形態変化の機序を検索することは、歯・医学の急務である。
しかし骨の形態は、構成細胞である骨芽細胞、骨細胞と破骨細胞のバランスや、軟骨、血管、神経、腱などの周囲組織との協調関係によって維持されると推測されているものの、年齢や環境、あるいは種差によって骨組織の形態が多様化する機構は未知である。
本研究の目的は、石灰化骨基質の形成・維持機構を微細形態学的・組織細胞化学的に元素・分子レベルで解析し、さらに加齢現象、内外の環境変化、種差による形態変化あるいは分子細胞学的変化を検索することにより、骨組織の形態制御機構を解明し、骨組織の根本的理解を図ることである。その為、本研究においては(A)石灰化骨基質の形成・維持機構の解明、(B)加齢現象および内外の環境変化に伴う形態変化の解析を試みる。
(A)においては、現有している最新の分析電顕である電子エネルギー損失分光電子顕微鏡(EELS)と、当研究室が開発に成功した石灰化結晶単離法を発展をさせて、長年の懸案である石灰化の分子機構とそれらの細胞制御を解明する。さらに、今まで余り注目されていなかった骨組織の神経、血管、腱等を細胞組織化学的に検索し、総合的に考察する。(B)においては(A)での情報をもとに、加齢や機械的刺激を含む様々な要因に対する骨組織の形意変化を検索する。さらに(A)(B)から得られた情報を統合することにより、骨形態が有する意義を理解し、骨組織の形態制御機構を解明する。
本研究により、多様かつ複雑な骨形態の役割が明らかとなると同時に、骨粗鬆症や変形性関節症、あるいは骨折などの外傷の治療、腫瘍性疾患や先天性疾患による骨欠損の再建にも、貴重な情報を与えると思われる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html 

2015年9月18日