1999年
著者:大関武彦
所属:浜松医科大学小児科

  • 健康科学
  • 生活習慣病予防

はじめに

乳製品の摂取は栄養素として熱源のひとつとしての意義を有することは言うまでもないが、それとともに蛋白質、脂肪、カルシウムなど筋肉、脂肪、骨などの体構成成分の形成に重要なものである。しかしながら栄養源としての乳製品とヒトの身体に対して有する意味は年齢により異なり、それ以外にも時代的変動や世界的な地域差も非常に大きいと考えられる。このため各年代に応じた検討は必須であり、その変動にも注目すべきであろう。
近年我が国の小児における大きな変化をあげるとすれば、食生活・運動・遊びや勉学などのライフスタイル・生活習慣の変貌と、身長・体重のみならず骨量や体脂肪量などの体格・体組成の変動を指摘することが出来よう。この両者は密接に関連し、まず前者が後者に影響をおよぼす。しかしながらライフスタイルを数量化して解析することは、必ずしも容易でなく、また地域差、年齢差を始めとして多くの要因が関与しているため、多方面からの評価が必要となる。これらと体組成の相関を分析することによって、生活習僚の変化が小児の体格・体組成にどのような連関を有しているかを明らかにすることが可能となることが期待される。
体組成の調節系についての研究における近年の進歩の中では、レプチンに関する知見は画期的なものであろう。レプチンは脂肪組織から産生されるホルモンとして注目され、レプチンは摂食の調節作用を有することから、肥満やヤセ状態において、その病態に関与したり病因となったりする可能性がある。また脂肪組織量の指標としての意義もあり、その他の性成熟などとの関連も興味深い点である。肥満症は生活習慣病としては中心的疾患であるが、特に成長に伴う変動は小児において重要なものである。レプチン濃度の適切な評価やその意味づけは、これらの点から詳細な検討が必要なテーマあろう。我々は本年度の研究として、肥満のより詳しい解析を可能にするために、小児期から思春期にかけての血中レプチン濃度の、年齢に伴う変動と性差について検討した。これらと脂質代謝の上から最も意要と考えられる総コレステロール、HDLコレステロールとの関連も興味ある点であろう。
今年度は牛乳栄養学術研究助成を得て、我々は小児期の年齢に伴う体組成の変動の指標として、身長・体重・体格指数の他に、体脂肪由来のホルモンであるレプチンを測定した。これらの身体的指標と脂質の変動との関連を検討するとともに、生活習慣の調査を実施しこれらのそれぞれの現状と関係を明らかにすることにより、乳製品の小児に対する栄養学的意義と今後のライフスタイル、生活習慣病などとの関連を研究した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html 

2015年9月18日