1999年
著者:菅野道廣
所属:熊本県立大学環境共生学部

  • 健康科学
  • 生活習慣病予防
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

緒言

共役型リノール酸(conjugated linoleic acid、以下CLAと略称する)は反芻動物の体脂、乳脂中に少量成分ながら常在する脂肪酸で、優れた機能性が知られている。CLAはリノール酸の位置および幾何異性体の総称で、数種の異性体からなっているが、主成分は9c,11t-/9t,11c-およびIOc,12t/10t,12c-18:2である。これら脂肪酸のうちどの異性体がCLAが示すきわめて多様な健康効果に責任があるのかはまだ明確ではない。活性本体の研究は今後の大きな課題の一つであろう。これらの機能性のうち、もっとも注目を集めているのは制癌効果であり、その作用は同様の作用を示すn-3系多価不飽和脂紡酸に比べはるかに強いことが報告されているが、まだ動物実験の域を出ていなヒトへの適用が試みられているのは、肥満防止についてである。学術論文としてはまだ公表されていないが、1日当たり約2gを数ヶ月にわたって摂取すると、有意な体脂肪の減少があることが示されている。CLAは体脂肪のみを減少させ、体タンパク質量には影響せず、あるいはむしろ相対的には増加させるとも言われている。しかし、機能性食品素材としてはその効果発現にはかなりの時間を要することが問題であり、適当な食品成分との組み合わせでCLAの効果を露大させる必要がある。
CLAは食欲抑制による脂肪摂取量の減少、リポタンパク質リパーゼ活性の抑制を介する吸収された脂肪の末梢組織への取り込みの抑制、ホルモン感受性リパーゼ活性の上昇を介する体脂肪の動員促進、そして肝臓での脂肪酸の燃焼促進によって積極約に体脂肪を減少させるとみなされている。このように、体脂肪減少に関わるシステムが構築されているにも関わらず、実際には予測されるようには効率的ではない。例えば、肝臓での脂肪酸のβ酸化促進作用は比較的弱く、おそらくこの過程が体脂肪減少効果のネックとなっていると考えられる。したがって、β酸化を亢進する食品成分の併用は、抗肥満作用を相乗的に高める可能性がある。
われわれは、ゴマ油中に高濃度に含まれるセサミンが、肝臓での脂肪酸酸化を有意に高めることを、ラットの単離肝臓環流実験および肝臓の酵素系の応答測定によって推定してきた。そこで、予鎗実験としてまず、この点とCLAの脂肪酸酸化促進作用を機認した、その成果を基に、ラットにセサミンとCLAを同時に摂取させ、体脂肪沈着に及ぼす影響を検討することにした。さらに、肝臓での脂肪合成持続は体脂肪減少の有用な方法の一つであることから、そのような効果を発現する食品成分の併用効果についても検討した。すなわち、大豆タンパク質はカゼインと比較し、肝臓での脂肪酸合成を抑え、肝臓のみならず血液トリグリセリド濃度を減少させる作用がある。一方、n-3系多価不飽和脂肪酸も肝臓での脂肪酸合成を抑え、血清トリグリセリド濃度を下げる効果がある。そこで、これらの成分のCLAとの組み合わせ効果についてカゼインと比較検討した。このような組み合わせ効果の有用性は十分理解されている。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html

2015年9月18日