1999年
著者:坂野喜子
所属:岐阜大学医学部生化学教室

  • 健康科学
  • 免疫・感染防御・アレルギー・がん

要旨

牛乳は健康食品として古くより知られており、幼児の成長にとって必要な骨形成に重要な成分を含むことが知られている。また、栄養食品としてばかりではなく、主蛋白質ラクトフェリンや乳清蛋白などの胃や膵臓中の蛋白分解酵素による分解産物などに有効な多くの生理活性物質を含み、細菌感染防止、免疫賦活、細胞増殖に有効であることが明らかにされている。我々は牛乳蛋白質のプロテアーゼによる分解産物中に骨髄性巨核芽球性白血病紛胞Meg-01の強力なアポトーシス誘導作用を示す物質が存在することを見い出した。この物質を同定したところ、ラクトフェリンのペプシン分解産物であることが明らかになった。ラクトフェリンは、乳中に多く含まれているが、好中球の二次顆粒にも含まれることが知られている。また、涙液、鼻汁、唾液、尿、精液、羊水中にも見い出され、鉄吸収調節作用、抗菌作用、免疫賦活作用、細胞増殖・分化調節作用などの生理機能が知られているが、その作用機構については十分解析されていない。最近、ラクトフェリンのペプシン分解産物ラクトフェリンBが白血病細胞HL60のアポトーシスを誘導することが報告された。我々は、ラクトフェリン分解物中に白血病細胞のアポトーシスを誘導する多種類のペプチドが存在することを見い出した。今回は、ラクトフェリン分解物中のラクトフェリン以外の新規物質を単離精製し、Meg-01や骨芽様細胞MC3T3-E1に対する増殖、分化への影響とその作用メカニズムについて、細胞内情報伝達系を中心に検討した。また、ラクトフェリン分解産物が固形ガン、特に口腔扁平上皮ガン、および骨肉種由来の培養細胞(SAS、HSC-4:ヒト舌扁平上皮癌、UMR-106:ラット骨肉種)に対するアポトーシス誘導の分子生物学的機構を明らかにし、牛乳由来ペプチドのガン細胞機織抑制機構を検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html

2015年9月18日