1998年
著者:阿部敏明
所属:帝京大学医学部 小児科学教室

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

胎児、乳幼児期における脳神経系の正常な形成・発達にとって栄養は重要な因子である。発達期におけるドコサヘキサエン酸(DHA)の多量摂取は学習能力向上や網膜発達に影響を与えるなど、その機序の解明は小児栄養の大きな課題である。一方、DHAは脂質代謝調節に影響を与えることが知られている。コレステロールはミエリンを含め、脳神経系の形成に必須な物質であるが、中枢神経系における脂質代謝は血液・脳関門の存在からも他の臓器とは異なる機構で制御されることが予測され、特に成長・発達期における脳のコレステロール代謝系に及ぼすDHAの影響は解明されていない。我々はこれまでに、コレステロールは諸臓器および器官の形成・発達に強く影響することに注目し、コレステロール合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素の発達に伴う発現量の変動を解析し、脳の髄鞘化に伴いその発現量は増加することを示した。また血中リポ蛋白から細胞へのコレステロールの取り込み(供給)量を検討するため、LDL受容体の発現が一定であることを示した。さらに、出生前のコレステロール代謝の変化も解析し、LDL受容体とHMG-CoA還元酵素の発現量を検討した結果、出生以前において脳のHMG-CoA還元酵素発現量の増加を認めた。そこで本年度は、コレステロール代謝の発達に伴う変動を制御する機構あるいは互いに影響を及ぼし合う因子を解明するために、DHAを多量摂取させ発達期における各臓器の脂肪酸組成の変動を解析し、摂取脂肪酸が脳をはじめ組織脂肪酸組成に強く影響することを示した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021epa.html

2015年9月18日