1998年
著者:杉山みち子
所属:国立健康・栄養研究所

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はじめに

高齢者の栄養管理においては、タンパク質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition :PEM)を早期に栄養スクリーニングによって明らかにし、さらに、その栄養状態を評価・判定し、個々人のエネルギー・タンパク質の必要量に見合った適正な量を、効果的に補給することが必要である。
アメリカ合衆国では、1980年代から高齢者における最大の栄養問題はPEMであることが明らかにされ、その改善においては、早期の栄養スクリーニングによってリスク者を判別し、栄養食品によって、通常の1.5倍-2倍量のエネルギー・タンパク質を経口あるいは経腸栄養によって補給し、改善効果をあげることが実証されている。
一方、わが国の高齢者の栄養管理は食事管理に終始しているのが現状である。松田らは、わが国において、初めて1996年から高齢者の栄養管理サービスを構築するために、日本全国の高齢者施設を対象とした調査・研究を行っている(厚生省老人保健事業推進等補助金研究、主任研究員 松田朗)。その結果、日本の高齢者の病院などの施設において、PEMリスク者の出現(血清アルブミン値3.5g/dl以下)は、約40パーセント以上に観察されることを明らかにしている。さらに、この結果から、在宅ケアを受けている高齢者では、PEMの出現頻度はかなり高率になることが危倶されている。
しかし、日本の高齢者についてPEMを改善するために、牛乳・乳製品、あるいはその栄養食品をいつ、 どのくらいの期間、 どのように用いれば、 どれくらい効果があるのかは、栄養食品を1ヵ月間PEMリスク者に与えて、血清アルブミン値の有意な上昇を観察した堤らの報告があるものの、詳細については不明な点が多い。
そこで、本研究では、高齢者のPEMの改善に牛乳・乳製品を主原料とする栄養食品を用いた栄養補給ならびに栄養教育の有効性ならびに問題点などを明らかにすることを目的に研究を行った。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021epa.html

2015年9月18日