1995年
著者:福永仁夫
所属:川崎医科大学放射線科(核医学)

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

はじめに

近年、高齢化社会の到来とともに、進行性疾患が増加している。骨の退行性疾患に対しては、骨粗鬆症がこれに相当し、患者数が多いことや、快適な老後送る上でQOLを損なうために、医学的にも社会的にも注目されている。
骨粗鬆症の予防には、ライフ・スタイルの改善が大きな位置を占める。国民栄養調査によると日本人の栄養所要量のうち、カルシウム(Ca)は唯一不足している。骨粗鬆症の発症には多くの危険因子が関与するが、食生活ではCaの摂取不足がそのー因といわれる。
骨粗鬆症は、「低骨量と骨の微細構造の劣化が原因で、骨の脆弱性が増し、骨折をきたし易い全身性の骨疾患」と定義される。事実、骨量が若年成人の平均値の70%以下に低下すると骨折の頻度が増加することが知られている。したがって、骨量を性格に測定できれば、骨折の危険性の予知が可能で、骨粗鬆症の予防を導入する手掛かりとなる。現在、種々の非侵襲的な骨量測定法が開発され、臨床に供されている。しかし、大都分の骨量測定法は、X線を使用しているので、少量の放射線被曝が認められる。その点、超音波法(QUS)は、被曝がなく、また骨硬度だけでなく骨質も評価できる方法として期待されている。
近年、骨形成や骨吸収を反映して血中あるいは尿中で増減を示す骨代謝マーカーが同定され、その測定系が開発されている。骨量は「過去」の骨代謝の結果を表すのに対して、骨代謝マーカーは「現在」生じている骨代謝状態を把握することが可能である。そのため、骨代謝マーカーの測定は、骨量よりも早期に治療や予防の効果を知ることができる可能性がある。
骨粗鬆症の予防を骨量レベルからみると、ヒトの一生のうちで最も骨量が高い若年期の最大骨量を増加させるか、女性では閉経後の骨量減少を抑制するかにある。従来より骨粗鬆症の予防にはカルシウムの十分な摂取や適度の運動が勧められており、骨量との関係も報告されている。しかし、ある一時点の調査であったり、retrospectiveな研究が大部分である。
本研究では、Caの主要な供給源である牛乳の骨粗鬆症に対する予防効果を、健常女性群を対象に縦断調査によって骨代謝マーカーと骨量の測定から検討するものである。
平成7年度は、牛乳摂取が骨量値および骨代謝マーカー値に及ぼす影響の縦断約研究の基礎となるデータを収集した。
平成8年度は、18カ月間における牛乳摂取状態と骨量または骨代謝マーカーの変化との関係を検討した。
平成9年度は、牛乳摂取の骨量および骨代謝マーカーに対する影響をさらに明らかにするため、牛乳摂取以外のライフ・スタイル、運動状態などの調査をも併せて解析に供した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022lsv.html 

2015年9月18日