1995年
著者:寺本民生
所属:帝京大学医学部内科

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

研究目的

従来、女性は男性に比較すると高脂血症頻度も低く、動脈硬化性疾患の頻度も極めて低いため女性であること自体が動派硬化発症の上で負の危険因子と考えられていた。しかしながらFramingham heart studyでも更年期以降の女性では高脂血症の頻度とともに動脈硬化発症率の上昇が観察されるとして報告されている。我が国の最近のDataでも50歳以降の女性では血清コレステロール220mg/dl以上の高コレステロール血症が50%以上に達することが康生省の調査で明らかにされており高齢化社会を迎える現状ではその対策が重要である。
一方、更年期女性におけるもう一点重要なことは、骨粗鬆症の発症であり、その予妨も重要な社会問題である。この様な観点から、最近はホルモン補充療法(HRT)が注目されている。米国では約30%の更年期女性がHRTを受けているがわが国では10%に満たない。その理由として子宮癌、乳癌誘発などの副作用の問題とともにHRTによる抗動脈硬化作用のメカニズムが明らかにされていないことがあげられる。動脈硬化に対してLDLが促進的にHDLが抑制約に作用することはよく知られている。
LDLに関しでは更年期に達した高脂血症女性の検討からLDLのFractional catabolic rateの低下により高脂血痕になることが知られているが、HDLの上昇機構については十分な検討がなされているとはいえない。
また、近年動脈硬化発症機構に血管内皮細胞の障害が注目されている。とくに内皮細胞における接着分子発現を酸化LDLのリゾフォスファチジルコリン(LPC)が促進することが報告されている。
そこで、更年期女性における高脂血生に対してホルモン補充療法の血清脂質に及ぼす影響について脂質、リポ蛋白、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)並びに骨代謝に焦点をあてて検討したので報告をする。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022ll2.html 

2015年9月18日