1995年
著者:杉山みち子
所属:国立健康・栄養研究所

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はじめに

高齢者の栄養管理においては,タンパク質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition,PEM)を早期に栄養スクリーニングによって明らかにし、さらに,その栄養状態を評価・判定し,個々人のエネルギー, タンパク質の必要量に見合った適正な量を,効率的に補給することが必要である。
アメリカ合衆国では、1980年代から,高齢者における最大の栄養問題はPEMであることが切らかにされ, その改善においては,早期の栄養スクリーニングによってリスク者を判別し,乳清タンパク質を組成とする栄養食品によって,通常の約1.5-2倍量のエネルギー・タンパク質を,経口あるいは経腸栄餐によって補給し,改善効果あげることが実証されている。
一方, わが国の高齢者の栄養管理は食餌管理に終始しているのが現状である。申請者らは、わが国において,はじめて,1996年から高齢者の栄養管理サービスを構築するために,日本全国の高齢者総設を対象とした調査・研究を行っている(厚生省老人保健事業推進等補助金研究,主任研究員 松田朗)。その結果,日本において高齢者の病院などの施設において,PEMの出現(早期リスクの段階,血清アルブミン3.5-2.5)は,約40%以上に観察されることを明らかにしている。さらに,この結果から,在宅ケアを受けている高齢者では,PEMの出現頻度はかなり高率になることが危惧されている。
しかし,日本の高齢者について,PEMを改善するために,牛乳・乳製品あるいはその栄養食品をいつ,どの位の期間,どのように用いれば,どれくらいの効果があるのかは,殆ど研究されていない。
そこで,本研究では,高齢者のPEMの改善に牛乳・乳製品を主源料とする栄養食品を用いた栄養補給の有効性ならびに問題点などについて明らかにした。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022lsv.html

2015年9月18日