1995年
著者:下村吉治
所属:名古屋工業大学

  • 健康科学
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

研究目的

 運動によりタンパク質代謝か高まり、タンパク質の必要量が増加することは良く知られた事実である。分岐鎖アミノ酸は栄養学的な必須アミノ酸であり、食餌中タンパク質に含まれる必須アミノ酸の約50%、総タンパク質の約35%を占める。このように、分岐鎖アミノ酸はタンパク質に含まれる量が多いこともあり、運動中にエネルギー源及び糖新生の基質として利用されると考えられている。さらに、運動前に分岐鎖アミノ酸を摂取すると運動中の筋タンパク質分解を抑制することが人において報告されており、運動中の筋肉の消耗の抑制や運動後の筋肉回復にも分岐鎖アミノ酸は有効に作用する可能性が考えられる。
食餌タンパク質の中でも牛乳タンパク質に含まれる分岐鎖アミノ酸量は21.4%であり、他の動物性タンパク質(豚肉、18.6%;牛肉、16.8%;鶏肉、18.3%)や植物性タンパク質(大豆、18.4%;米、16.3% ;小麦粉、15.8%)と比べてその含量が高い。従って、激しくスポーツを行う人にとっては牛乳タンパクは有利なタンパク質であると考えられる。
ラット肝臓中の分岐鎖アミノ酸代謝の律速酵素である分岐鎖α-ケト脱水素酵素(branched-chain α-keto acid dehydrogenase: BCKDH)の活性は、体内の分岐鎖アミノ酸が過剰になると活性が高まり、不足すると活性が低下することが明らかにされている。その不活性化は酵素タンパクのリン酸化によるものであり、反対に活性化は脱リン酸化によるものである。BCKDHをリン酸化しその活性調節をする酵素がBCKDHキナーゼであり、BCKDHの主要な活性調節因子であると考えられている。
本研究では、まず、食餌中の牛乳タンパク質の量を変動させ、それがラット肝臓のBCKDHの活性状態に及ぼす影響を検討し、分岐鎖アミノ酸代謝調節に関する基礎約情報を得ると同時に、牛乳タンパク質の必要量と運動トレーニングの関係を明らかにすることを目的とした。さらに、これに引き統き、ラット血清の分岐鎖アミノ酸濃度および肝臓のBCKDH活性に及ぼす牛乳タンパク質と他の食餌タンパク質の影響をトレーニングラットにおいて比較し、牛乳タンパク質の有用性を明らかにすることを目的とした。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022ll2.html

2015年9月18日