1994年
著者:鈴木正成
所属:筑波大学体育科学系運動栄養学

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

目的

近い将来において、高齢者人口の増大とともに骨桓しょう症患者が増大すると推測されている。運動は骨塩量を増大させる有効な手段と考えられているが、マラソンランナーや長距離選手に疲労骨折を併発することが多いことから、運動すればかならず骨塩量が増加するとは限らないと考えられる。いろいろな種目のスポーツ選手を比較した研究から、骨塩量を増加させるには、陸上協議の長距離走のようなエアロビック型よりも、ウエイトリフティングや陸上競技の投てき種目のような、レジスタンス型の運動の方が有効であることが示されている。レジスタンス型の運動が、骨塩量を増火させるメカニズムとして、骨代謝マーカーの血中オステオカルシン濃度の上昇から骨形成の促進が示唆されている。しかし、骨吸収にたいする運動の影響については十分に明らかにされていない。その理由の一つとして、骨吸収を的確に反映するマーカーおよびその判定法が後確立されていなかったことが指摘される。従来、骨吸収の指標として尿中ハイドロキシプ口リン排泄量が用いられてきたが、ハイド口キシプロリンは骨に特異に存在するⅠ型コラーゲンだけでなく、皮膚、血管壁、軟骨などに存在するあらゆる型のコラーゲンにも含まれるので、骨特異性が低い。さらに、コラーゲンの分解で生じたハイドロキシプロリンのかなりの部分は肝で代謝分解されること、また食物由来のハイドロキシプロリンも尿中ハイドロキシプロリン排泄量に影響するなどの理由から、骨吸収の指標として尿中ハイドロキシプロリンを用いるのには問題があった。
長近、骨吸収をより正確に反映するマーカーとして尿中のデオキシピリジノンが有用だと報告された。デオキシピリジノンはコラーゲン分子内の架橋物質であり、骨コラーゲンに局在するので、骨特異性が高い骨吸収の指標であるとして注目をあつめつつある。また骨吸収に際しては、体内で代謝されずに全て尿中に排泄されるので、全身の骨吸収を定量的に推定できる指標でもある。
そこで本研究では、レジスタンス運動が一過性に骨吸収と骨形成に及ぼす影響を調べるために、一回のレジスタンス運動前後での骨代謝マーカーの変動を経時的に検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021rh3.html 

2015年9月18日