1994年
著者:村田光範
所属:東京女子医科大学付属第2病院小児科

  • 健康科学
  • 生活習慣病予防

はじめに

わが図では現在豊かな経済力に支えられ、質・量とも豊富な食料に恵まれるとともに、交通機関の整備、家電製品の普及、第3次産業従事者の増加など肉体労働が減少して運動不足に陥りやすい環境にある。このような過食と運動不足の環境は必然的に肥満を増加せしめている。
肥満は糖尿病(成人型)、高血圧、動脈硬化性疾患の発生に関与するとともに、それ自体も高度になるほど運動能力の低下その他の肉体的・精神的障害をもたらす、小児期であっても肥満児には成人型糖尿病や脂肪肝がまれではない。また小児肥満はその40-80%が成人肥満に移行すると報告されており、小児期からの肥満対策の必要性が重視されるようになってきた。
肥満治療の観点からすると、一旦成立した肥満を解消するのは極めて困難である。特に成長期にあって、かつ精神的に未成熟な小児では食事制限や規則的な運動に対する動機付けは成人よりさらに困難である。以上より小児における最善の肥満治療は予防にあると言える。肥満児の頻度が年齢の増加とともに増加していく現状からして、幼児期に肥満予防対策を行うことは小児期の肥満減少に大きな意味を持つであろうし、この幼児の肥満予防対策のための効率の良いシステム作りが急がれる所以である。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021rh3.html

2015年9月18日